「ハナ差」「クビ差」など、その接戦ぶりを独自の表現で表す競馬レースの世界。まったく同じ着差/着順のことは「同着」と呼ぶ。史上初のGⅠ同着となったアパパネ&サンテミリオン。昨年オークスの現場にもいた、文筆家の島田明宏氏(46)が検量室での一幕を語る。
*
接戦のことを「デッドヒート」と言いますが、これはそもそも競馬用語なんです。英米では競馬の同着の意味に当たります。実はゴール前の接戦は競馬の専売特許のようなもので、これには馬という動物の習性が関係しています。馬は捕食動物から逃げるもの。それも群れ(集団)で逃げます。競馬は最大18頭で競走しますが、先頭の馬が並んで走っていくことは、実はわりと普通のこと。ですから競馬の趣意は、むしろ「常に接戦になるから馬にレースをさせるとおもしろいね」ということかもしれません。
昨年5月のオークスでは、サンテミリオンを桜花賞馬のアパパネが鋭く追い込み、写真判定に。12分待たされたあと、なんと同着で確定しました。私は、あのレースが行われた東京競馬場の検量室の前にいましたが、JRAの職員が着順を示すホワイトボードに「同着」と書き込んだ瞬間にどよめきが上がりましたね。と同時に、期せずして、厩舎関係者か報道陣からか、「だったらダイワスカーレットとウオッカも同着でいいじゃないか!」という叫びが聞こえました。
というのは、これまた競馬史上屈指の名勝負と呼ばれている08年の秋の天皇賞のことを誰もが思い出していたからです。出走全17頭が重賞ウイナーという好メンバーから、ダイワスカーレット(安藤勝騎手)が逃げ、直線はライバル・ウオッカ(武豊騎手)がぐんぐんと追い込む一騎打ち。レコード決着となった名手同士のハイレベルのレースは、ウオッカが2㌢だけ差し切っていた。騎手が一流だと名勝負の純度が高まります。
あのレースもやはり長い写真判定になりましたが、両馬とも人気があったし、「これだけの名勝負は同着でもいいんじゃないか?」という空気が確かに流れていたんです。けれども決着をつけた。だから「やっぱりGⅠは同着ナシなんだな」と納得したのも事実。
しかし、オークス以降、GⅠの1着同着が解禁‥‥となったかどうかわかりませんが、僕としてはまた起こってほしいですね。「我が最高の同着を持っていること」が競馬ファンの醍醐味でもあると思いますから。
私の場合は、タマモクロスとダイナカーペンターが1着同着した88年の阪神大賞典こそが「我が最高の引き分け」。のちに世間を揺るがせるタマモクロスVSオグリキャップの伝説の芦毛決戦が起こるわけですが、あのタマモの追い込みが2着だと判定されていたら、タマモクロスの連勝街道がとぎれ、競馬ブームは起こらなかったとすら思います。
ええ、当時の私はタマモクロスの大ファンでした。助かった〜と、馬券と拳を握りましたよ(笑)。
-
-
人気記事
- 1
- 俳優・清水章吾「金銭トラブル」が警察沙汰に…元妻が激白する執拗な“不幸の手紙”被害
- 2
- 大相撲初場所「琴桜の5勝10敗」で思い出す「4大関が公然と無気力相撲」の汚点史
- 3
- 「いい人」返上のやす子が「死ねばいいのに!」罵倒…それってフワちゃんと変わらない大問題
- 4
- 「ちびまる子ちゃん」にとんでもない場面が登場「中居問題」を想起させる「意味深な部屋」
- 5
- 日本人男児刺殺犯「即執行」で気になる中国の死刑
- 6
- 全米が号泣!21年暮らした猫の死後に飼い主のもとに届いた「サプライズギフト」
- 7
- 壇蜜「5年間別居婚」の夫がノンフィクション漫画連載…タイトルはズバリ「壇蜜」だった
- 8
- 「中の人が交代すればいい」では済まない「つば九郎」体調不良で休止の「フジテレビいじり」問題
- 9
- サザンオールスターズの新曲に「大谷翔平」が登場するまでの「使用許諾」問題
- 10
- 中居騒動で被害女性の訴えを放置したフジテレビ・佐々木恭子アナってどんな人!?
-
急上昇!話題の記事(アサジョ)
-
働く男のトレンド情報(アサ芸Biz)
-
-
最新号 / アサヒ芸能関連リンク
-
-
厳選!おもしろネタ(アサジョ)
-
最新記事
-
アーカイブ
-
美食と酒の悦楽探究(食楽web)