昨年6月に他界した野際陽子は、1992年7月期放送のドラマ「ずっとあなたが好きだった」(TBS系)で佐野史郎演じる息子の冬彦を溺愛する母を演じ、賀来千香子演じるヒロインで嫁の美和を困らせたことをきっかけに「着物の似合う手厳しい姑像」を確立。その後も「厳しい姑」を数多く演じ「姑女優」の異名を持つまでになった。野際は自分の後継者として浅野ゆう子を指名したが、浅野はまだ姑役を演じたことはないのが現状だ。
そんな状況下で、新たな姑像を確立したのが松坂慶子だ。
松坂は朝ドラ「まんぷく」(NHK)で安藤サクラ演じるヒロイン・福子の母、鈴を演じているのだが、これが大当たりしたようだ。
鈴は、常に不平不満を口にし、ふた言目には「私は武士の娘です」と言っては相手をねじ伏せようとする、いわゆる“困ったちゃん”。福子は、長年の母娘の付き合いから笑顔で聞き流したり、正論で言い負かしたりもするのだが、長谷川博己演じる婿の萬平は、鈴の言うことがまったく聞こえないかのごとく無視するため、鈴はそんな萬平にホオをふくらませたり拗ねたり、11月19日放送の第43話では、とうとう家出までしてしまうのだ。
「こんな母親、義母を他の女優が演じたら、ただ単にうっとうしいだけのおばさんに見えてしまいそうですが、松坂が演じると“うざかわいい”と評判になっているようです。ネット上では鈴の口癖である『武士の娘』を略して『ぶしむす』と呼ばれ、松坂にしかできない新しい母親、義母像だと称賛されているのだとか」(テレビ誌ライター)
役者のすばらしさは何も演技力だけでは測れない。松坂の新境地「うざかわいい母親、義母」役を、朝ドラ以降も究めてほしい。