「五体不満足」などの著作で知られる乙武洋匡(ひろただ)氏(37)が「車椅子のため入店拒否された」と有名イタリアンをネット上で名指し批判。その波紋は広がるばかりで‥‥。
「お騒がせしてすいません。今は乙武さんとは和解し、わだかまりもありません。騒動については、今後は当店の課題としてはもちろん、お客様と飲食店のあり方を考えていただくキッカケになればと思っています」
そう話すのは、くだんの東京・銀座のイタリア料理店店主。古い雑居ビルの2階で席数は12。店員2人で切り盛りする小さな店だが、グルメサイトでも高評価を得ている人気店だ。
乙武氏のツイッターによれば、コトの発端は、5月18日。知人女性と夕食を楽しもうと同店を予約し訪れた乙武氏が、店のある2階にエレベーターが止まらない仕組みになっているため、店側に相談。すると店主に「車椅子なら、事前に言っておくのが常識」「他のお客の迷惑になる」「これがうちのスタイル」などと告げられ、入店を拒否されたというのだ。しかも〈銀座での屈辱〉という言葉とともに、店の実名も公開。フォロワー数約61万人というだけに、ネット上では〈店が100%悪い〉〈有名人に店名まで公表されたら店潰すよ?と言われているようなもの〉などの声が飛び交い、賛否両論の嵐となった。くだんのイタリア料理店には連日無言電話が相次いだという。
多くの企業研修を行い、マナー問題に詳しい株式会社ミントス代表の大石敏夫氏はこう話す。
「マナーという観点では『相手に対してどんな気持ちで接するか』が基本。一流のサービスとは『安心感』やスタッフの『チームワーク』の他、『平等感』『思いやり』が重要なので、その点、お店側のマナーはよくはなかった。ただ、マナーはコミュニケーション。乙武さんも予約時に自分の状態をしっかり伝えなかったことはコミュニケーション不足だったと思います」
一方、乙武氏と同じく両手両足が不自由で電動車椅子を使用し、この件を自身のブログで言及しているお笑い芸人のホーキング青山はこう話す。
「お互い少々ヒートアップしすぎたんじゃないですか。ただ、まだまだ障害者は世間で受け入れられてなく、交通機関等はバリアフリーになってきたけど、店舗などはまだまだ障害者を想定した造りじゃない。だから事前問い合わせをしておいたほうが円滑にコトが進むというのは自分の経験からも確かだと思う。オレはもともと両足が左右に開いていて、建物の間口が広めじゃないと厳しいから、自分の身を守るために事前に電話確認している。もっとも、健常者は問い合わせの必要がないのに障害者にかぎり常識とするのは、どうしても『排除された』という印象を持ってしまうのもしかたがないと思う」
提出中の障害者差別解消法案に関し、国会でも話題に上ったこの騒動。乙武氏の行動は、今後にどう生かされていくのか。