熟練作業員が高線量で原発に入れないという問題の他に「日当の値崩れ」の問題もあります。
いわき市には原発作業員を募集する貼り紙が市内のあちこちに貼られています。日当が、〈1万4000円〉と書かれていましたが、そんなわずかな金額で死と隣り合わせの仕事をする人はあまりいないと思いますよ。
それも野田前総理が原発事故の収束宣言をしたためです。実は、この宣言のせいで作業員が手にする報酬も格段に下がったんです。だから原発では、慢性的な人手不足に加えて、被曝線量の問題でベテラン作業員が減り、未熟な原発作業員が増えている。
一方、原発から離れた場所での作業である除染の仕事は手当も原発作業員に比べてまだいい分、なり手があるようです。
安倍総理は2020年のオリンピック開催に向けて、作業を急がせていますが、この絶望的な状況を本当に知っているのか。
難度の高い作業はロボットがやるんでしょうが、全てロボット任せとはいかないでしょう。若葉マークの付いた作業員が多い現状では、廃炉に向けた作業は進まないし、もっと危険な局面も出てくると思います。
作業員の間では、ただひたすら燃料を冷やすための水を流し続けている状況に、「オレたちの仕事は(流した汚染水をためる)タンクを作り続けることしかない」という悲観的な見方が広がっています。だって放射線量が高くて作業自体ができないんですから。汚染水をためたタンクはやがて(福島原発が建っている)双葉、大熊の両町を埋め尽くすだろうと言われています。でも、そのタンクを作る職人も減っているんです。
また、作業員の重要な仕事の一つに原発敷地内のガレキの撤去があります。
集めたガレキはトラックに積まれています。作業員は3交代制ですが、不思議なことにトラックに積まれたガレキは夜のうちになくなっているんですよ。
ガレキの中には原発の残骸も含まれますが、では、それらのガレキをどう処分しているのか。
作業員の話などによると、どうもガレキは原発周辺の帰還困難区域に埋めているとのことでした。1号機のそばには川が流れていますが、そこに廃材が捨てられていた、という証言さえありました。
政府は原発事故の被災地を帰還困難、居住制限、避難指示解除準備の3区域に分け、将来の帰還を奨励していますが、いくら帰還困難地域でも、原発のガレキを投棄しているとしたら、住民感情が許さない。政府は言っていることとやっていることが、支離滅裂ですよ。
◆文・八木澤高明氏