小泉氏は総理時代の04年に、海上から北方領土を視察し、プーチン大統領から不快感を表明された間柄だ。森氏を通じてとはいえ、小泉氏が簡単にロシア側の提案を鵜呑みにするのだろうか。永田町関係者が言う。
「もともと小泉氏とプーチン大統領は信頼関係にありました。06年のサンクトペテルブルク・サミットの夕食会で、小泉氏はコサックダンスを披露。その際、プーチン大統領は『小泉はよほどのバカでなければ、かなりの大物だ』と感心し、信頼関係を回復しています。現在も小泉氏とプーチン大統領との間にはホットラインが存在していて、今回も大統領から『エネルギー政策の多角化には大賛成だ』との言質を得ていると聞いています」
とはいえ、小泉氏の提言はすでに挑発の域に達している。実際に安倍総理の周辺も穏やかではない。
政治部記者が話す。
「政権内部では、小泉氏の一連の言動に対して『言わせておけ』と冷ややかな対応が圧倒的に多いです。中には、『だいたい、小泉氏は日米原子力協定を知らないんじゃないのか』とか『脱原発を主張する前に、政治生命をかけた郵政民営化がどうなったのか、国民の前で説明してからにしてほしい』と、あからさまに怒っているベテラン議員もいるほどです」
森氏が小泉氏に話したとされる内容は、当然のように安倍総理にも伝わっているはずで、今回の対立は、うわべだけということなのか。政治部デスクはこう話す。
「ソ連時代から、森氏や安倍総理、小泉氏が所属していた派閥である清和会が自民党内では対ロシアのパイプや利権を握っていました。少なくとも、再稼働を目指しつつも原発依存度を下げると明言している安倍総理にとっては、代替燃料の輸入先の選択肢を増やしていくことは、価格の面でも安定供給の面でもプラスです。そういう意味では、現状のロシアとの関係はうまくいっていると言えます。今回の小泉氏と総理の対立ですが、国会閉幕後に両者が会談する予定とも言われていて、その全貌が明らかになることでしょう」
はたして、小泉vs安倍の「脱原発バトル」は、シナリオどおりのヤラセなのか、それとも本当にガチンコだったのか‥‥。