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ニッポンの「タブー」大百科(5) タブーを破った男たち 「JRAに喧嘩を売った男」 競馬ライター 水上学がキレた!「馬の“病気情報”を出走後に公開するなッ」

事業収益の減少が深刻化する中央競馬。そこには、競馬ファンにソッポを向き、情報開示をおざなりにしてきたJRAや競馬サークルの“隠体質”が見え隠れしている。長年、その「鉄のカーテン」をこじあけようと、競馬界のタブーに挑んできた男の激白を聞け!

「オルフェーヴルが3冠馬に輝いた翌日、(6番人気の)ベルシャザールに騎乗した後藤騎手が、敗因(17着と惨敗)について語っている報道を見て、またも失望させられました」
 こう話すのは、競馬ライターの水上学氏だ。その水上氏が問題視するのは、10月23日の菊花賞のレース。翌日のスポーツ紙にはベルシャザールを「喉の弱い馬」と表現していた。さらに、中には、より具体的に「DDSP(喉の疾病)」と、病名を報じるところもあった。
「レース前に馬の状態を話せる立場にない騎手が悪いわけではありませんが、こんな言い訳のようなコメントを聞かされても、ファンは納得しませんよ。問題は管理者の松田国英調教師です。どこの報道をひっくり返しても、レース前にベルシャザールが『DDSP』という記述は見当たらない。調教師として、馬主に対しての遠慮、あるいは多少の症状では走ってしまうこともあるから明かさなかったのかもしれません。しかし、それは馬券を買うファン側が判断すること。こんなことをするからファンがアキレて離れるんですよ」
 06年のジャパンカップ。ハーツクライは2番人気だった。レース前に、橋口弘次郎調教師がハーツクライの喉鳴りを事前に公表。結果、10着に終わった。
 しかし、橋口調教師の決断を水上氏はこう評する。
「私はホースマンとしての英断だったと思います。『どうなさるかの判断はファンの皆様に委ねますが・・・・』という言葉に、大事なお金を張っている我々への配慮が感じられました。さらに、『一生懸命走るハーツクライを応援してやってください』と付け加えた言葉には、思わず胸が熱くなったものです。もし、ハーツの馬券を買って、外したとしても、怒るファンはいませんよ」
 06年、水上氏は「競馬界に喧嘩売らせていただきます!」(KKベストセラーズ刊)を上梓。JRA職員や調教師にインタビュー取材しながら、ファンに向けての情報公開の大切さを説いてきた。最盛期のJRAは4兆円を超える事業収益があった。今年3月に公表した事業収益は約2兆4438億円まで減少。今年は、この2兆円すら切ると言われており、ファン離れが加速していることがわかる。
 まだまだファンのための情報公開は途上なのだ。
「馬場のコンディションは、一部の心あるマスコミの指摘などもあり、細かく発表されるようになりました。しかし、馬具に関しては、まだまだです。例えば、チークピーシズ(馬の後方の視界をさえぎるための馬具)。5年以上も前から実際の効果を認める調教師もいるのに、ブリンカーのように事前発表されてません。私はハミ(馬の口に含ませる馬具)のチェンジや蹄鉄の種類にしても、結果を左右しかねない情報は公開すべきだと思っています。それは同時に、トレセンに出入りできるマスコミ関係者だけが知ることができるという不健全な構図を壊すことにもつながる。それも公正競馬の大事な要素ではないでしょうか」
 常にファンから疑問視されている審議の裁決についても同様だ。握りしめていた馬券が紙くずになりかねないだけに、「適当なアナウンスだけで終わらせてほしくない」と思うのがファン心理というものだろう。
「レース直後は、速やかな裁決が望まれるので、全レース終了後に、当日の裁決委員長が審議内容についてコメントを公開するなどすれば、ファンは納得しなくても、理解はすると思うんですよね。ただ、裁決のシステムにも、問題点が多々あります。一つにはJRAの審判部は、職員が研修を積む程度で、プロ野球のアンパイアのように専門職ではないことがあげられます。これでは威厳が保てない。例えば、騎手が引退後にある一定期間の研修や試験制度を経て担当すれば、もっと信頼を得られると思うのですが・・・・」
 水上氏のファン目線での提言は、まだまだ続きそうだ。

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