05年6月、橋本会長は大阪府警に競売入札妨害容疑で逮捕される。六代目体制発足直後、若頭補佐に就任したわずか2日後だった。しかも、この事件に関連して06年3月までに、橋本会長は大阪府警に計3回も逮捕されているのだ。
社会部記者が言う。
「新執行部の山口組最高幹部を長期的にシャバに出さないという思惑もあるが、それ以上に、この連続逮捕からは、大阪府警にとって橋本会長率いる極心連合会が最大の標的であることがわかります。そして、橋本会長に直結するであろう人物も同様に標的でした」 羽賀被告が記した「レッテル」(小社刊)には、自身が逮捕後に受けた取り調べの様子が描かれている。そこには大阪府警のK刑事のこんな言葉がある。
「おまえなんか単なる神輿や! もともと俺らの狙いは渡辺なんや」
ジャーナリストが話す。「大阪府警は渡辺被告を『極心連合会相談役』と認定していると主張しますが、警察がG(極道)認定をするためには、『自認』が必要不可欠。渡辺被告は『ヤクザではない』と言っているから、本来は認定できないはず。ただ、これまでの裁判等で橋本会長との親密な仲は認めており、何としても大阪府警は渡辺被告をヤクザと扱いたいのでしょう」
当然、紳助も大阪府警にとっては、橋本会長に直接、結び付く周辺者であった。
「羽賀事件以前から、紳助と橋本会長の関係を把握していた大阪府警捜査4課では、紳助をマークする班が存在しています。4.5名の捜査員が、主に紳助の副業の利益が橋本会長側に還元されていないかを注目していました」(前出・記者)
水面下の「紳助VS大阪府警」の攻防の最中、羽賀事件で浮かび上がったのが問題の携帯メールだった。渡辺被告を介して橋本会長と紳助の関係性が明らかになる証拠である。紳助を内偵する捜査員には、僥倖だったに違いない。
それが、なぜ吉本に渡ってしまったのか。
「吉本がメール記録を入手した経緯は判然としません。紳助に突きつけた文書は捜査報告書の書式だったというから、府警が作成したもので間違いないでしょう。しかし、府警は渡していないとしています。羽賀被告らの裁判の公判前整理手続きで検察が裁判所に提出していた証拠の一つだから、府警以外にも入手可能だというのですが、羽賀被告側から渡ったとは考えにくい。やはり、府警が内々に‥‥と考えるのが自然だと思います」(前出・記者)
では、なぜ紳助は大阪府警の狙いどおりに引退を決意したのか。吉本が紳助に提示したメール記録は最新でも4年前のものだ。今はヤクザとの交流はないと抗弁することもできたはず。
芸能プロ幹部が話す。
「会見で吉本は『8月中旬に情報提供を受けた』としていますが、私は7月下旬には、『紳助が吉本にヤクザの問題で追い詰められている』という話を聞きました。8月中旬以前から、極秘裏に吉本幹部と紳助の間で話し合いはあり、その話し合いの最中に『紳助への追及をやめろ』という電話が吉本に入った。吉本幹部が紳助はヤクザと現在も交際していると確信し、みずから引退を申し出なければ、解雇するつもりだったとも言われています」
全ては大阪府警の思惑どおりなのだろうか。現在も山口組は平穏なまま、紳助引退に一切の反応を示していない。
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