中でも、地盤の緩い湾岸線の荒川湾岸橋で発生したトラス部材の損傷、同じく湾岸線の大黒ジャンクションでの支承の脱落は、被害の深刻さから、多くの防災関係者の心胆を寒からしめた。この震災被害について首都高広報室は多くを語らず、大黒ジャンクションの損傷についても、
「あそこは特別な構造をしていますから・・・・」
と言葉を濁したが、震度5強といえば、建築基準法上、全ての構造物において損傷が発生してはならないとされている震度階である。しかも、湾岸線は新しい技術に基づいて設計、建設された路線。トラス部材の損傷や支承の脱落など、あってはならないのである。
しかし一歩譲って、仮に今回の被害が例外的なものであったとしても、そもそも一連の耐震補強対策が十分な効果を上げるためには、当初の施工が適正に行われていることが大前提となる。施工段階で手抜きがあれば、小手先の耐震補強を重ねても、砂上の楼閣になってしまうからだ。
実は、首都高の安全性に関わるこの問題について、本誌は当初の施工を巡る大前提を根本から揺るがす驚愕証言を入手した。
首都高速道路株式会社の前身に当たる首都高速道路公団が産声を上げたのは59年。その後、東京五輪開催を挟んだ60年代にまず、都心環状線やそこから延びる放射線の一部が完成した。
さらに、70年代以降、東名高速への接続線や湾岸線などが整備され、現在に至っているが、話は黎明期とでも言うべき60年代に遡る。当時、下請け業者として首都高の建設工事に当たっていた元現場監督が、衝撃的な言葉を口にした。
「俺を含む数人で会食をしていた時のことだ。1人が『首都高で渋滞にハマると、ユラユラ揺れておっかない』と言うと、別の1人が『バカ言うな、首都高は揺れるから壊れないんだ』と応酬した。そのやり取りを聞いていた俺は、『いや、首都高は大きく揺れると間違いなく壊れるぞ』と言ってやったんだよ」
言われた意味がわからずキョトンとしている2人を前に、元現場監督は次のように畳みかけたのだ。
「ここだけの話だが、実は橋脚の型枠に生コンを流し込む際、現場に散乱していた廃材やらガレキやら何やらを一緒にブチ込んだんだ。廃材を処理するにもカネがかかる。大きな板切れなどは、日雇いの作業員に命じて、ツルハシでバラバラにさせ、どんどん投げ入れさせた。生コンを流し込むたびに、手当たりしだいという感じだったな。だから、橋脚の中身はスカスカだ。でかい地震が来たら、一発でジ・エンドだよ」
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