社会

池上彰 そうだったのか!日本復興を阻む「敵」(1) 捨てればゴミ、使えば資源

 未曽有の大災害から時間ばかりがいたずらに過ぎる中、被災地からは、はかばかしい復興の足音は聞こえてこない。この日本の危機を憂うのは、ご存じジャーナリストの池上彰氏。あらゆる情報を網羅、駆使、そして伝達する「ミスターニュース」がニッポンの再浮上を阻む“復興の敵”に厳しく対峙するGWスペシャル第1弾!

――東日本大震災から1年余りたちましたが、なかなか復興が進んでいません。
 そうですね。まずは、文字どおり“山積み”になっているガレキの問題から片づけていきましょうか。ガレキ問題の1つは、膨大な量があって、とても被災地だけでは処理しきれないということがあります。ですから、それをよその県で処理してもらおうと思ったら、猛烈に受け入れ反対となってしまった。
――ようやく最近になって受け入れに前向きになった自治体も出てきましたが。
 えぇ、でも福島第一原発の近くの放射性物質が多量についたガレキだったら、まだわかりますよ。ところが、宮城や岩手など全然関係ないところのものでもイヤだといっているのが悲しいというか、情けないですよね。ほら、思い出してみてください。事故が起こった時にはあれだけみんなで助け合おうと言ってましたよね。ところが、いざあなたのところでも引き受けてという話になったら、それはイヤだというのは、自分に関係ないところで頑張ってねという話だったのか、ということになりますよね。
――確かに、そのとおりですね。
 ただね、もう1つ、あのガレキは現地で財産というか建築資材として使えるというのは知っていましたか?
――えっ、そうなんですか!
 はい、例えば防潮堤が壊れてしまいましたが、そこにはまた新しいものを造らなければいけません。その時に、あのガレキを資材の一部として活用するんですよ。過去に同様な例があります。横浜の山下公園は関東大震災のガレキを埋め立てて造られたし、阪神大震災の時のガレキは神戸港のあたりでずいぶん使われているんですよ。
――今回の地震では気仙沼、石巻などがかなり水没しています。
 はい、ずいぶん地盤が低くなっちゃったところがありますよね。あそこを埋めて高台にしたり、道路をかさ上げするのにガレキを使ったりすることができるんですよ。実はガレキはゴミではなくて資源なんですね。実際に、使わせてほしいと要望してる地元があちこちにあるんですよ。
――それがすぐに行われていないのはなぜでしょう?
 おっと、いい質問ですねぇ。それは法律としてはガレキは産業廃棄物であり、ゴミとして処理しなければいけないということになっちゃうわけなんですよ。本当に日本という国は何かあると必ず法律が出てきて「いや、できません」とか、「法律に基づけば」という話になってしまう。前例や平時の法律に縛られて硬直したお役所思考ではダメなんですよ。こういう非常時だからこそ、さっさと使ってしまおうと、要するに地方自治体が勝手にやればいいんだけど、そのお金はどこから出るかというと、国が出す復興費だということになっちゃう‥‥。
――つまり、我々の生命と財産を守るはずの法律が、逆にガレキ処理の妨げになっているんですね。
 ですから1つはもちろん、日本中が痛みを分かち合うという意味でガレキの処理は受け入れなければいけない。ただ放射性物質の汚染度が高いものを受け入れるなんていうのは無理な話ですから、低いものに関してですよ。と同時に、ガレキは使いようによってはゴミではなく資源なんだよね。以前言ったでしょ。「捨てればゴミ、使えば資源」、ガレキも資源ゴミと同じでリサイクルできるという視点が大事なんですよ。

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