しかし、落合監督は「契約社会のことだから」と愚痴を言うこともなく、いつもどおり、淡々と采配を振ってきた。そこには、落合監督と球団の金銭を巡る駆け引きがあったと言われている。
「かつて『落合監督はコーチと契約するのに、落合企画を通じて契約を行い、マージンを取っている』という噂がまことしやかに流れた。というのも落合監督は、代理人契約をして少しでもコーチの契約条件をよくするのが当然と考えているからです。一事が万事で、とにかくお金に関するエピソードには事欠かない」
落合監督は8年間の監督生活の中で、一度もBクラスに落ちることなく、リーグ優勝4回、日本一1回の好成績を残している。結果で判断されるのがプロとするならば、当然の再契約でもおかしくない。しかし、ある球団幹部は「費用対効果で判断した」と言う。つまり業績は認めるが、球団運営を考えた時に、「落合では高すぎる」と言うのだ。
だが、落合監督にも言い分はある。かつて、他球団の関係者に、中日の殿様商売を嘆いたことがあったという。
「監督やコーチたちには、成績で年俸が決まるインセンティブをつけられるのが一般的。ということは、シーズンで成績を残せば、自然と年俸が上がり、人件費も膨らんでいくのは当たり前です。それをクリアにするのが営業努力であり、野球人は勝つことが企業努力。親方日の丸のような中日は他球団に比べたら、営業努力なんてほとんどやっていないに等しい」(他球団関係者)
これこそが、落合の考えるプロであり「オレ流」とも言われる「勝利至上主義」の本音なのである。
また、今回の日本シリーズ進出に際しても10月30日で切れた監督契約の期限を「そのあとは随時、話し合って決めていくしかない」と言う球団に対し、落合監督は沈黙を守り続けている。
「球団とすれば、監督を勝手に切っておいて何の対応もしないのでは、ファンから非難の集中砲火を浴びてしまう。そこで監督契約を修正して、落合監督のところに契約書を送りつける。返事がないのは不満ということと考えて、また送る。黙っていれば、条件が上がる。中日とすれば、監督に指揮を放棄されれば、いい赤っ恥をかくことになりますからね。今は落合監督の言いなりになるしかない。その代わり、落合監督も球団批判に踏み切れないという事情があるようです」(球界関係者)
その金額たるや、落合監督の年俸を日割り計算して、球団としてシーズンが終了するまで払い続けるというものだ。実際には一日100万円でアジアシリーズまで行けば、30日で3000万円。さらにリーグ優勝、日本シリーズ出場のインセンティブを加えれば、1億円近い金額が動くと言われているだけに、「沈黙は金」とばかりに余分なことを言わずに、じっと我慢を決め込んでいるフシがある。
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