「巨星、堕つ」─。落語界の重鎮で立川流の家元であった立川談志が、11月21日に喉頭ガンで亡くなった。古典落語を“立川談志”というフィルターを通じて昇華させた「革命児」は、世の中に対しても常に挑発的だった。毒舌をまき散らし、タレント議員の先駆者として品格を問われ“逆ギレ”することもあった。そんな75年の生涯を交遊のあった面々が振り返る。
かつて、「笑点」で共演していた落語家の林家木久扇師匠が、こう振り返る。
「(訃報は)国立演芸場の名人会に出てまして、私はトリだったんですよ。終わった頃にアタシのうちから電話がありまして、それで(談志が亡くなったのを)知りました。その時はもう信じられないし‥‥。しょっちゅう『死ぬ』って言ってましたから、またかと思って‥‥」
「落語界の風雲児」と言われ、古典落語を大胆な解釈とアレンジで、談志流に染め上げ、“天才”の名をほしいままに。毒舌と露悪的なパフォーマンスで毀誉褒貶言われたものの、落語界きっての理論派ぶりとカリスマ性に数多くのフォロワーが集った。今や志の輔や談春、志らくといった金看板を次々と輩出し、落語界に確固たる地位を築いている。しかしその一方で、談志は最後まで「美学」にこだわる人生を全うし、家族に見守られながら天国へと旅立った。
木久扇師匠が続ける。
「お弟子さんも最期にお会いできなかったってねえ。そういうこともご遺族には厳しく言ったんじゃないでしょうか。かっこよく別れたいってんでね。凄くシャイでモダンな人だった。死に際を演出したんでしょうね」
毒舌とブラックユーモアで、一躍、人気者となった談志だが、その生涯をたどっていくと、そこには「トラブルとスキャンダル」が付き物だった。
タレント議員の先駆者として、71年に参議院全国区に出馬し、みごと当選。75年には、三木武夫内閣で、沖縄開発政務次官に就任したが、視察先で二日酔いで現れたことを追及されると、
「公務より酒が大切に決まってんだろ」
と啖呵を切り、職を辞した。
また痛烈な皮肉を公然と言い放ち、歯に衣着せぬ発言でたびたび物議を醸した。寄席にいた観客をどなり飛ばし、追い返すこともあった。
談志が芸名の名付け親でもある盟友の毒蝮三太夫氏が語る。
「彼の素顔はねえ、反骨って言うけど、それは彼の一種のダンディズム。その格好つけ通して終わったってところが、大した反骨精神だと思うよね。ある意味で、(談志のように)嫌な人の前であぐらかいたりとか、偉い人の前で足投げ出したりとかするっていうのは、普通の人はやらないよね。人はやらないけどあいつ(談志)はやるっていうのは、やりたいからやるっていうよりも、やることのほうがウケるだろうっていうところですよ。だって、他の人がやったらケンカになるよ。彼だからエンターテインメントになったんですよ。見せ物に。きっと『人間ってのはこんなもんだよ』って言いたかったんだよ。そういうところをおもしろがらせたサービス精神は人一倍あった人だね」
毒を含みつつも、その底流には、談志一流の「ユーモア」があったというのだ。
毒蝮氏が続ける。
「やっぱりね、目立つようなことをやってるよ、あいつはちゃんと。実際に、こんなにみんなが騒いでくれて。死んでから何日もたってんのにね。国会議員になりゃあ、すぐ(役職を)辞めるしさあ、戒名(立川雲黒斎家元勝手居士・たてかわうんこくさいいえもとかってこじ)にしたってね。それはある意味、その反骨はサービス精神から出たもんだと思うな、俺は」
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