かつては人気のコンサートやスポーツイベント興行といえば、最寄り駅から会場までの道すがら、多くのダフ屋から声をかけられたものだ。今やその数もめっきり減ったが、その裏で、本職を差し置いて女子高生がグレーゾーンのチケット転売ビジネスに手を染めているというではないか──。
ベテランの現役ダフ屋A氏が嘆く。
「今は会場近くで余りを買い取ろうにも、フダ(チケット)が出ないんだよ。2年ぐらい前に『チケキャン(チケットキャンプ)』ができてから、ダフ屋に売ろうってのも、ダフ屋から買おうってのも激減したな。商売上がったりだよ、まったく」
チケキャンとは、チケットの転売を仲介するサイトだ。取り引きが成立すれば1割の手数料を取るが、定価以下であれば手数料も取らない。そのうえ、ネットオークションなどの個人売買で、現金を振り込んだのに肝心のチケットが送られてこないといったトラブルも極力回避できるため、利用者が増えているという。しかも、公演開始ギリギリまで通信機器を通じて交渉し、現地で受け渡しができるため、チケットを持たないファンも暴力団の資金源となるダフ屋の姿を探す必要がなくなったようだ。
別のダフ屋B氏が言う。
「そりゃそうだわな。ダフ屋から高い金で買えば、条例で買ったほうもパクられる可能性がある。実際は、やり取りを見てた警官からダフ屋だけパクられて、買ったほうは半券だけ警官に持っていかれて入場は許されるなんてこともあるけどな。それにしたって危ない橋は渡りたくねえだろ?」
話題となっているチケキャンのサイトでは、定価数千円のチケットが30万~40万円で出品されることもザラ。それでもしっかり買い手がつくのだ。
「この前も、ジャニーズアイドルの会場近くで立ってたら、女子高生が来て『15万で買ってください』って。『そんな高いの無理だ』って言ったら、『だったらチケキャンに載せるからいいです』だってよ。会場最寄り駅にダフ屋が立ってても、目の前で一般人同士が札束とチケットを交換してるんだから、嫌になるわな。中にはそんな女子高生が1日で200万円売り上げたってよ」(A氏)
もはやファン同士の交流などではなく、完全な商売の様相を呈しているようなのだ。
「やっぱり高値で売れんのは嵐を筆頭にジャニーズ勢だな。あくどいファンはチケットを入手すんのに、家族とかの名義を使ってファンクラブに10人分とか入って、抽選のチケットを何とか手に入れんのよ。定価で買ったそれを30万とかで売って、儲けた金で安いチケットを入手して、また転売するなんてやつもいる。もはや小遣い稼ぎのレベルじゃないな」(A氏)
ところで、いくら観たい公演とはいえ、異常高騰したチケットを買う側もどこからそんな金が捻出できるのか。ジャニーズグループを追いかける20代OLのファンが口を開いた。
「普通のOLが1回で40万~50万円出すなんて不思議でしょう? 私はジャニーズオタクで、そのためだけに夜はキャバクラで働いてる。友達なんて風俗嬢だよ。未成年はそんな仕事もできないから、女子高生にはエンコー(援助交際)してる子もいる。だって、みんなジャニーズ好きだもん」
真偽は定かでないが、先のB氏によれば、都内某ホテルの近くではキャストがジャニーズオタクばかりのデリヘルまであるとか。
ただし、健全とは言えない状況に、主催者も手をこまねいているばかりではない。転売されないように、チケットを販売する際に個人データを登録し、入場時に身分証の提示を求めたりしているのだ。ところが、女子高生ダフ屋はそれすらモノともしない。
「身分証まで貸し出して転売してんだよな。会場前で相手の身分証と交換して、ライブがハネた(終わった)ら回収。身分証必要なチケットをダフ屋が売った場合、その客が入場できなくて文句言われたら、返金だよ。詐欺でパクられたらたまんないからな。最近じゃ、顔認証システムで本人確認するチケットも販売されてるけど、自分の特徴を『ポッチャリ』だとか『目が離れてる』だとか書き込んで、似てるやつが買うだろうって高額で出品してる。何でダフ屋ばっか取り締まられるんだよ!」(B氏)
華やかなステージの裏では、まるでダフ屋が良心的にすら思えるダークな世界があった。