●ゲスト:石破茂(いしば・しげる) 1957年、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。三井銀行(現・三井住友銀行)入行。86年、衆議院議員に全国最年少で初当選(当時29歳)。2002年、第一次小泉内閣の時に防衛庁長官で初入閣し、その後も防衛大臣、農林水産大臣、政調会長、幹事長などを歴任する。14年、初代・地方創生・国家戦略特別区域担当大臣に就任、16年8月に退任。著書に「国防」、「国難」、「日本人のための『集団的自衛権』入門」など。近著は「日本列島創生論 地方は国家の希望なり」(新潮新書)。
稲田防衛相の辞任、加計学園問題など、今なお数々のスキャンダルで支持率を下げている安倍内閣。さらに、弾道ミサイルを撃ち続ける北朝鮮、我が道を行くトランプ大統領‥‥この混迷極まりない状況に日本はどう対処していくべきなのか、天才テリーと石破茂氏が徹底討論!
テリー お忙しい中とは思いますが、今日はいろいろと聞かせてください。
石破 いえいえ、よろしくお願い致します。
テリー まず、南スーダンPKO派遣部隊の日報問題で稲田(朋美)防衛相が辞任しました。もし石破さんが防衛大臣で、陸上自衛隊から「日報がありました」と報告が上がってきたら、どう対処しましたか?
石破 もちろん「ありました」と報告しますよ。「なかったことにしよう」なんてことは、選択肢としてありえないです。
テリー そもそも「あった、なくした」レベルで扱う書類じゃないわけですよね。そこにもし「戦闘態勢に入っている」という言葉があったとすれば、部隊を撤退させなくちゃいけないわけですから。でも、経験の浅い稲田さん一人でそんな大きな問題に対処できますか? 普通に考えると、誰か上の人に相談していると思うんですけど。
石破 その判断は、確かに難しいんです。「戦闘」といっても、それが国家間の紛争を意味するかどうかで、まったく法的な意味合いが違います。憲法にある「国際紛争を解決手段としての武力の行使」と認められることになってしまえば、当然に「撤退」という判断になりますから。
テリー そうですよね。
石破 ただ、実際にいわゆるドンパチがあったとして、その片方の主体が国家でない集団、例えばテロ集団やゴロツキ集団みたいなものであれば、それは「国際紛争」ではないから憲法には抵触しない。とすれば、今度は当然に「継続」という判断になります。ですから、ただ「戦闘」という言葉があったからといって、それだけでは判断できません。
テリー じゃあ、もう一つ。「データがなかったことにしよう」と口裏を合わせていたにもかかわらず、突如「今後は私が厳しく防衛省をチェックしていく」と手のひらを返されたわけですよね。あれって制服組からすれば「仲間のはずなのに、何でいきなりこっちを攻めてくるの?」という感じになりませんか?
石破 そういうことをしていたのであれば、人心は離反するのでしょうね。
テリー でしょう? 今回、稲田さんがいちばんダメだったのは、国民や自衛官のことを考えず、安倍さんだけを守ろうとしているように見えたことだと思うんです。
石破 うーん、そこは同情する面も多々あるんですけどね。稲田大臣は政調会長を務めておられたので、いちおう、全分野の政策を手がけられたとは思いますが、自民党の国防部会や安全保障調査会で特別の役職に就かれたことはなかった。まして防衛政務官も副大臣も経験されたことがなかった。それで突然、約20万組織のトップを務めるのは相当に大変だったと思います。
テリー こういうことになって、今後、稲田さんは政治家として、やっていけるんでしょうか。
石破 それは政治家としての稲田先生の今後のご対応いかんというところでしょう。