「最近、ほくろが大きくなってきた。もしかして悪い病気じゃないだろうか」と心配になったことがある人もいるだろう。
ほくろには生まれつきの先天性のものと、後天性の2種類がある。両者は発生のメカニズムは異なるものの、見た目には区別がつかない。
後天性のほくろは、一種のシミのようなもの。日光を浴びると表皮に黒や茶色のメラニン色素ができメラノサイトの数も増える。メラノサイトとは通常、メラニン色素を作ることによって、紫外線などから皮膚の細胞の遺伝子が障害を受け皮膚ガンなどが発症することのないよう、遺伝子を守る役割を果たしている。
ほくろで最も心配なのは「メラノーマ(悪性黒色腫)」だ。これは、皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞が無制限に増え続ける悪性の皮膚ガン。ほくろそのものがメラノーマに変わるわけではないが、多くの場合は、30歳以降にできるため、若いうちに発生することは少ない。大人になってできたシミやほくろのようなものが、急速に大きくなったり膨らんだりする場合は、注意が必要だ。
ガンになる可能性がある特徴は、「直径5ミリ以上」「丸くなく、いびつな形をしている」「境目がギザギザ、あるいはボヤけている」「手足や陰部にある」「色のムラがある」。さらに、出血があったり、短期間で急に大きくなったりする場合は、悪性化の可能性があるので、早めに皮膚科を受診したほうがいい。
メラノーマと似ていて見分けにくい「老人性色素斑」は、皮膚の老化現象。紫外線の影響で、加齢とともに発症する。
ほくろが悪性化しやすいかどうかは、ダーモスコープという拡大鏡でのぞいて見ることによって、判別できる。大学病院の皮膚科ではダーモスコープ検査を行っていることが多いので、気になる人は調べてもらうとよいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。