「更年期障害」というと、閉経前後の中年女性に多いイメージだが、実は男性にも更年期障害があることがわかっている。「男性更年期障害」の原因は、テストステロンのホルモン低下だ。発症時期は40代から70代くらいまでと長期間にわたるため、女性よりも深刻だとも言われている。
症状は性欲低下やED(勃起不全)、うつにみられるイライラや不安、不眠、疲労感、記憶力の低下や意欲減退の精神状態、さらに、ほてりや発汗、関節痛、頻尿などが挙げられる。「会社に行きたくない」「朝、なかなか起きられない」といった単なる怠け者に思われる行動の多くは、実は男性更年期障害が原因となっている場合もあるのだ。
最たる症状のEDは、単なる性機能の衰えだけでなく、高血圧や狭心症、心筋梗塞などの深刻な病気と深く関係していることが指摘されている。心血管疾患を患った男性のうち67%は、発症の平均3年9カ月前にEDだった、という調査結果もある。
男性更年期障害はつい見落としがちだが、朝勃ちが1年以上ない場合は医療機関に相談したほうがいいだろう。
泌尿器科を受診するのが一般的だが、最近では、男性更年期外来やメンズヘルス外来などもあるので、上手に利用するのもおすすめだ。
治療は、男性ホルモンの注射・塗布などが代表的だが、うつなどの心の症状に対しては、抗うつ薬や抗不安薬などを用いる場合もある。
予防には男性ホルモンのテストステロンを低下させないことがポイントだ。睡眠時に男性ホルモンが分泌されるため、質の高い睡眠を心がけよう。また、筋肉が刺激を受けると男性ホルモンの分泌が促進されるので、適度な運動も積極的に行いたい。
まずは生活習慣の見直しを心がけて、テストステロンの分泌を高めたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。