高齢化社会で増加の一途をたどる認知症。その7割を占めるのが「アルツハイマー型認知症」だ。
この「アルツハイマー型」は、「アミロイドβ(ベータ)」という物質が脳に一定量蓄積することで、脳の悪化の引き金となることが研究でわかっている。
「アミロイドβ」は、脳内で作られるタンパク質の一種。通常は脳内のゴミとして短期間で分解・排出されるが、排出されずに脳に蓄積すると脳の神経細胞が死滅して、認知機能の低下につながっていくのだ。認知症を発症した人には、正常な人の25倍の「アミロイドβ」が脳に溜まっているという報告もある。
実は、認知症に気づく20年以上も前から、「アミロイドβ」が蓄積しているといわれている。40、50代から、すでに脳細胞レベルでは変化が始まっているのだ。
原因は不規則な日常生活、不健康な食生活、睡眠時の無呼吸、ストレス、基礎疾患、運動不足、社会的孤立などが影響していると考えられている。
ポイントは、40代~50代から「アミロイドβ」を溜めない生活習慣。そのために重要なのが運動だ。特に、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、脳の神経栄養因子の増加や、大脳の海馬の神経細胞の増加を促してくれる。動物実験においても運動している動物と、していない動物を比較すると、運動している方が「アミロイドβ」が溜まりにくいことが明らかになっている。
食事で気をつけたいのは、塩分や糖分、カロリーを摂りすぎないことだ。特に認知症予防に効果的だと考えられている、くるみ、かつお、さけ、えごま油、いわし、まぐろなどの「オメガ3脂肪酸」を含んだ食品を積極的に摂取しよう。
認知症予防のためには、日頃の適度な運動と、バランスのとれた食事が近道なのである。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。