建物の構造には、大別して「ラーメン構造」と「壁式構造」がある。このうち、今回はラーメン構造の建物が地震の揺れをどのように吸収するのか、そして最終的にはラーメン構造の建物がどのように崩壊、倒壊していくのか、そのメカニズムを紹介してみたい。
ラーメン構造は垂直方向の「柱」と水平方向の「梁」という、2つの骨組みによって建物全体を支える構造形式である。なお、建築学で言う「ラーメン」とは、日本人が大好きな麺類のことではなく、ドイツ語の「Rahmen(枠、骨組み)」が由来となっている。
ただし、ラーメン構造の建物の中には、一部の壁に「耐力壁」を組み込んだ構造を持つものもある。
鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の建物で言えば、おおむね6階建て以上のマンションやビルなどでは、もっぱらこのラーメン構造が採用されている。また、2階建てに代表される木造住宅にも、ラーメン構造の建物は少なくない。
では、地震の揺れに襲われた際、ラーメン構造の建物はどのような挙動を示すのか。ここでは一部に耐力壁を持つ、鉄筋コンクリート造のマンションを例に見ていきたい。
ラーメン構造の骨組みにあたる柱と梁は「剛接合」によって連結されている。剛接合とは「力によって部材が変形しても、接合部は変形しない接合方法」のことで、このような構造を持つ建物に地震の揺れが加わるとまず、建物は部材にあたる柱や梁や耐力壁の「しなり」や剛接合の「粘り」によって揺れに耐えようとする。
そのまま揺れが収まれば何事も起こらないが、さらに揺れが大きくなって一定の限界を超えると、今度は耐力壁だけが破壊される仕組みになっている。その結果、柱と梁だけの骨組みとなった建物のしなりが一段と増し、建物はより大きく揺れることで地震力を吸収しようとする。これが俗に言われる「建物は揺れるから壊れない」の正体だ。
そして、さらに揺れが大きくなって建物の耐震限界を超えると、柱や梁の破壊、柱の鉄筋の座屈、接合部の変形といった、致命的な損傷が部分的あるいは全面的に発生し、建物はついに崩壊、倒壊へと至るのである。
前回までに指摘した建物被害のレベルで言えば、いわゆる「大破以上」とされる被害がこれに該当する。そして、建物の破壊がここまで進めば、建物の資産価値がゼロに帰してしまうばかりか、建物の中にいる人の命も保証の限りではなくなるのだ。
(森省歩)
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。