今年はスギ花粉の大量飛散が予測されているとあって、花粉症の人にはつらいシーズンとなりそうだ。
症状緩和のひとつに花粉症を根本的に治す「アレルゲン免疫療法」(減感作療法)がある。これは花粉の抗原の抽出液で作った薬を皮下注射で体内に入れ、花粉への反応を弱めていく治療法。週1、2回の通院で注射を打つことになり、治療期間は2~3年と言われる。
この「アレルゲン免疫療法」の中で注目されているのが治療薬を舌に投与する「舌下免疫療法」だ。ただし保険適用になるのは、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎と診断された患者のみなので注意が必要だ。これ以外の花粉が原因の場合は皮下注射が選択される。
他にも、重症なスギ花粉症に対しては、20年に保険適用になった「抗IgE抗体 オマリズマブ(ゾレアR)」という皮下注射治療もある。
IgEは人の免疫防御システムで、血液中の総IgE値と体重をもとに投与量が計算され、2週間もしくは4週間おきの治療となる。日本では09年から、気管支喘息や特発性の慢性じんましんなどの治療薬として使用され保険適用されている。
対象者は、12歳以上で体重が20kg~150kg、今シーズンの花粉症で他の治療法では効き目がない、前シーズンでも重い花粉症症状があった、血清総IgE濃度が30~1500IU/ml以上などの様々な条件がある。費用はゾレアの薬剤費のみで1カ月あたり、3割負担の場合4000円台~7000円ほどだ。ただし、効果はあくまでそのシーズン限りのため、他のシーズンではスギ舌下免疫療法などの根本治療を検討することが勧められる。
花粉症は、症状の軽減か、花粉症を根治したいかで治療法が異なってくる。残念ながら万能方法は現時点ではない。治療法のメリットとデメリットを医師と相談して自分に合った治療法を選択しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。