何をしでかすか分からない中国政府から逃げ出そうと模索している中国人富裕層だが、自分たちの財産を守ろうと、必死に対抗策を練っている。
中国政府は富裕層の財産を把握するために人民元の紙幣を廃止し、デジタル人民元に移行する策を公言している。この時期がいつになるのかは発表していないが、もしそうなれば自分たちの財産はガラス張りとなり、容易に政府が介入できる。富裕層はそうなる前になんとか財産を隠そうと、カネの分散に頭を悩ませていた。
まずその前に、中国国内で理不尽に身柄を拘束されないために、国外に居を移す富裕層は少なくない。富裕層のひとりが証言する。
「現在、中国人は日本には観光ビザで何度でも出入国できますが、他国には投資ビザという制度が数多くあり、その国に何千万円か預ければ、ビザを取得できます。投資移民と揶揄される制度ですが、日本には今のところ、存在していません。富裕層に人気がある国は、カナダやシンガポール。治安がいいし、政情も安定しているからです。カナダでは約6000万円を政府に預ければ、投資ビザが手に入ります。ほかにいろいろな投資をして、財産を分散させるんです。日本の高級マンションを手に入れたり、それを賃貸物件にして利回りを得るのはそのためです(写真は、中国人富裕層に紹介するマンションを物色する中国のコーディネーター)。政府に取られるくらいなら、投資して金を使う方が賢明だと、誰もが計算していますよ。しかし、このように動けるのはまだ一部の富裕層であって、外国にコネクションがなかったり、情報収集能力のない富裕層は中国国内には数多くいます」
北海道のニセコ周辺では豪華な億ションが中国人富裕層に購入されていたり、都内でも品川駅港南口周辺のタワーマンションが、中国人富裕層の間で人気が高まっている。日本に長年暮らす中国人男性が言う。
「私も富裕層から、都内から遠くなく富士山が見える土地を探してくれないか、と頼まれています。都心から1時間程度で富士山が近くにある土地はそうあるものではないと説明していますが、どうやら複数の富裕層が5、6軒の一戸建てでともに住める土地を探しているようです。富裕層にとって、情報を得ることは非常に大事。だから固まって暮らそうとしているんでしょう」
はたして中国は今後、どのような策をとってくるのか。世界中が関心を持っているが、富裕層はもっと深刻な心境で注視している。