昨今、マダニに関する注意喚起が、自治体やニュース報道などで頻繁に見られる。
マダニ感染症は山野に生息するマダニ(3~8ミリ)が媒介する感染症の総称で、主なマダニ感染症としてはSFTS(重症熱性血小板減少症候群)のほか、日本紅斑熱、ツツガ虫病、ライム病などが知られている。
このうち最も危険で厄介とされているのが、SFTSだ。SFTSに感染すると、6~14日程度で原因不明の発熱、消化器症状(食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛)のほか、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、痙攣、昏睡)、リンパ節腫脹、咳、出血(紫斑、下血)などの症状が出現し、重症化すると死亡することもある。SFTSに対する治療法は現時点では確立されておらず、感染した場合の致死率は、実に約30%にも達するとされている。
しかもSFTSは、マダニに直接刺されなくても感染する危険性があるというのだ。マダニ感染症に詳しい専門家が、次のように警告する。
「マダニはヒトだけではなく、イノシシ、シカ、アライグマなどの野生動物、さらにはイヌやネコなどのペットにも寄生します。中でもSFTSについては、これらの動物を介してヒトに感染することが知られ、ペットのイヌやネコからの感染例がすでに報告されています。具体的には、SFTSに感染したイヌやネコにかまれたり、イヌやネコの唾液や尿などに触れたりすることで感染するのです」
したがって、ペットに口移しでエサを与えたり、口の周りを舐めさせたりするのは、もとよりNG。また、ペットに触れた後の手洗いの習慣化も必須となる。
「近年、SFTSは西日本から東日本へと感染が拡大しています。最近はアライグマなどの野生動物が街中に出没するケースも増えている。これらの野生動物を追い払おうとして手や足をかまれたり、唾液や尿に触れたりすることでも感染の危険性が生じますので、細心の注意が必要です」(前出・マダニに詳しい専門家)
ちなみに、ペットなどを介したSFTS感染者の割合は、感染者全体の3~5%と推測されている。決して大きな割合ではないが、致死率が30%であることを考えると、無視していい数字ではない。