夏の登山シーズンには毎年10万人から25万人の登山者で賑わう富士山。2013年にはユネスコの世界文化遺産に登録された日本一の山で、今なお秘かな大問題となっているのが「トイレ問題」と「ゴミ問題」だ。
10年以上前の富士山では、山小屋に設置されたトイレの処理機能が追いつかず、トイレから屎尿が垂れ流される状態が続いた。そのため、トイレが立ち並ぶ一帯では汚物臭がひどく、屎尿まみれのトイレットペーパーが地表に貼りつき、「白い川」と呼ばれる異様な光景が随所で見られたのである。
その後、環境配慮型トイレの整備が進み、「白い川」はほぼ見られなくなったが、屎尿問題自体が解決されたわけではない。山小屋関係者が指摘する。
「夏のトップシーズンを迎えると、登山道はそれこそ昼夜を問わず、長蛇の列をなした登山者でごったがえします。こうなると、トイレの受け入れキャパはすぐに限界を超えてしまうため、トイレと次のトイレの間の登山道も含めて、登山道脇にはトイレを我慢できなくなった登山者の屎尿とティッシュが散乱することになる。悪臭漂うその光景は『これが世界遺産に登録された富士山なのか!』と叫びたくなるほどの有様です」
加えて、登山客によるゴミのポイ捨ても、あとを絶たない。地元のネイチャーガイドが惨状を明かす。
「ゴミのポイ捨ては、観光気分でやってきた登山者に多い。富士登山のメインルートにあたる5合目から上の登山道も例外ではありませんが、中でも目を覆いたくなるのが、車によるアクセス道路もある5合目より下の山麓地帯。事実、山麓にはタバコの吸い殻をはじめとして、ペットボトル、空き缶、ビニール袋などが無造作に捨てられています。冗談抜きで、このままでは世界遺産の登録抹消という事態にもなりかねません」
この際、夏の富士登山には登山者数そのものの抑制を含めた、入山規制と審査が必要なのではないか。