「最近物忘れが激しい」「80歳の父親がボーッとしがちになった」といった事態に直面すると「認知症」を疑ってしまう。しかし、実際は違う病気だったというケースもある。
「認知症」は、様々な原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったために、物忘れや抑うつなどの認知障害を発症して、生活に支障をきたすようになってしまう状態を指す。複数のタイプがあり、診断を下すのが非常に難しい病気と言われている。
「認知症」と間違えられやすい主な病気は、「うつ病」「てんかん」「慢性硬膜下血腫」などだ。
まず「うつ病」だ。日常生活に支障が出るほどの気分の落ち込みの他に物忘れの症状を発症するケースもある。「認知症」の場合も物忘れの症状が見られるが、まったく別ものである。
「うつ病」の場合は、新たな事柄を覚えられなくなるが、「認知症」の場合は、既知の事柄の記憶そのものが抜け落ちてしまうのだ。
次に「てんかん」も注意が必要だ。一時的に意識を失ったり、目の焦点が合わずにぼんやりしたりするなどの症状が「認知症」と間違えられやすい。「てんかん」といえば、痙攣発作を発症して、子供に多い病気と思いがちだが、高齢の患者も少なくない。特に、高齢者の場合は痙攣を伴わない発作が多いため、「てんかん」だと気づかれないケースが多い。
「慢性硬膜下血腫」は、頭部の外傷によって脳に徐々に血液が溜まる病気。時間や場所がわからなくなる見当識障害や注意力の低下などの症状が認知症と誤認されやすい。
他にも、認知症と誤診される病気は多く存在する。誤診を防ぐためには、血液検査、頭部CT・MRI検査などが必要となる。疑わしい症状がある場合には、医療機関を受診してみよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。