能登半島地震(マグニチュード7.6、最大震度7)は家屋の損壊や消失など、震源域に重なる石川県を中心に、壊滅的な被害をもたらした。そんな中、地震関連の専門家らが秘かに注目しているのが、地盤の液状化に伴って発生した「側方流動」の脅威だ。
側方流動は、液状化とともに地盤が横方向に大きくずれ動く現象である。今回の能登半島地震でも、石川県内灘町の西荒屋地区で側方流動が発生し、地盤の移動距離が3メートル前後にも及んだことが確認されている。また、側方流動による同規模の被害は、石川県かほく市の大崎地区でも発生しているのだ。
地震工学の専門家が、次のように警鐘を鳴らす。
「西荒屋地区で発生した側方流動では、住宅や道路や電柱などが傾く被害が出ました。幸いなことに、今回の側方流動の発生地にタワーマンションなどの高層建築物はありませんでしたが、もし建っていたとすれば、側方流動によって根元から倒壊するという壊滅的な被害が発生していた可能性が高い」
どういうことなのか。地震工学の専門家が続ける。
「今回の側方流動は傾斜地で発生しましたが、平らな場所でも起こりえます。典型例はタワマンなどが林立する臨海部の埋立地。このような場所で大地震が発生し、海と陸を隔てる擁護壁が損傷を受けると、液状化した地盤が損傷部分から海に向かって一気に押し出されます。その結果、高層建築物を支えている基礎杭が次々と破壊され、支持を失ったタワマンなどがバッタリと倒れてしまうわけです」
発生が切迫しているとされる首都直下地震など都市部の大地震では、側方流動による高層建築物の倒壊に、一層の警戒が必要になるということだ。
(石森巌)