「善玉コレステロール」には、血管内に増えすぎたコレステロールを回収する働きがある。そのため、心臓や脳の健康によいと長年考えられてきた。しかし、最新の研究によると、正常値を超えると「認知症」を引き起こすリスクを高める可能性があるという。
米ボストン大学公衆衛生大学院のマリア・グリムールの研究によると「善玉コレステロール」が通常よりも多すぎる場合に、認知症リスクが42%も高まることが判明した。この傾向は特に高齢者の間で顕著に見られるという。
ただし、現時点では「善玉コレステロール」が直接的に認知症発症の要因となっているのかは明らかになっていない。今後も多くの研究が必要だ。しかしこの研究結果により、単に「善玉コレステロール」の値を上げればよいわけではなく、バランスのいい値を保つのが重要なことが明らかになったと言える。
コレステロールの数値を安定させるポイントは3つだ。1つ目は、「脂質を抑えた食事」。単に、卵の黄身や肉、チーズなどの食品を控えてコレステロールを摂取制限するのではなく、コレステロール値を安定させるような食事が重要となる。具体的には、脂質を抑え、野菜や果物、魚などを積極的に摂る食事がおすすめだ。
2つ目は「運動の習慣化」。定期的な運動は、コレステロールのバランスを保つだけでなく、心血管の健康を維持する効果もある。特に、ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動を、毎週150分程度継続すると効果が期待できる。
3つ目は「コレステロール値に影響する薬の服用を控える」ことだ。一般的に、心血管系の薬物、抗精神病薬、抗てんかん薬、ホルモン薬といった薬物は、コレステロール値を高めると考えられている。適切な治療方法を選択できるよう、医師に相談してみるのもいいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。