中国・浙江省杭州市の淳安県と建徳市にまたがる千島湖は、1959年に水力発電所を建設した時にできた人造湖だ。湖には大小1078の島が点在。そのため千島湖と名付けられているのだが、実はこの湖の下に沈んでいるものがあるという。
それが古代から続いた賀城と獅城という2つの城郭都市の遺跡で、現在、ここが「中国のアトランティス」として世界中からダイバーが集まる、世界有数のダイビングスポットになっているのだ。
中国の遺跡に詳しいジャーナリストが解説する。
「賀城は紀元前208年当時、経済・交通の要衝だった場所。一方、獅城も621年に遂安県の県都として栄えた街で、清王朝や明王朝時代に造られた建築物や彫刻がそのまま保存されている。考古学的に見ても、古い中国の建築様式がそのままの形で残る、貴重な存在とされています」
中国政府は当初、このダム湖の景色を国の景勝地として観光化していくことを目論み、1982年に国家級風景名勝区に指定した。ところが皮肉なことに、景勝地としての地上より、湖底に沈む古代都市がクローズアップされることになった。そして…。
「いつの頃からか、この湖を訪れるダイバーたちの間で、亡霊の目撃談や不気味な声を聞いた、と囁かれるようになりました」(前出・ジャーナリスト)
いったいどういうことか。超常現象の研究家があとを引き取って言う。
「実は1994年3月31日、この湖を走る遊覧船が武装強盗に襲われ、台湾から観光に来ていた客24名と、遊覧船乗員6名の計30名全員が殺害されたあげく、遊覧船が放火されるという惨劇が起こったんです。ところがどういうわけか、地元当局と公安がこの事件に報道管制を敷いたことで、当初はいっさい報道されることがなかった。4月2日になり、中国のラジオニュースが『千島湖の観光船で火災が発生し、乗っていた30人全員の死亡が確認された』と短く報じたものの、当然ながら台湾政府は中国側に猛抗議しました。その後の捜査で、この事件は人民解放軍の兵士たちによるシージャックだったと判明するのですが、遺族が対面した遺体は体が半分なかったり、臓器が取り除かれていたものも。それでも中国政府からは十分な説明がなかったといいます。この事件以降、ダイバーたちが水中で人影を目にしたり、返せ~返せ~といった声を耳にするという不思議な現象が起こったと言われているのです」
ただ、この噂が広がると、怖いもの見たさのダイバーが急増したというから、不思議なものだ。あまりにも無残な方法で殺害された30名の霊は、この湖の中を今も彷徨っているのかもしれない。
(ジョン・ドゥ)