第3の大惨事は、令和6年能登半島地震(マグニチュード7.6、最大震度7)による地殻変動が引き起こす、関連他地域での「内陸直下型大地震」である。
今回の能登半島地震では、能登半島の北部沿岸地域で最大4メートルにも達する地面の隆起が観測された。水平方向の地殻のズレも随所で観測され、例えば石川県輪島市では西方向に約1.2メートル、珠洲市と穴水町でも西方向に約90センチ、七尾市の能登島では北西方向に約70センチの水平移動が、それぞれ確認されている。
水平方向の地殻変動は、能登半島以外の地域でも観測されている。新潟県や富山県では北西方向に最大約10センチ、長野県と岐阜県、群馬県、栃木県でも北西方向に数センチの水平移動が、それぞれ確認されているのだ。
そんな中、多くの専門家から「一連の地殻変動は、能登地域以外でも内陸直下型地震の発生リスクが高まっていることを如実に示している」との声が上がり始めている。
とりわけ最大級に懸念されているのは、長野県や岐阜県での直下型大地震の多発だ。複数の専門家によれば、主な理由は以下の2点に集約される。
①岐阜県と長野県は「糸魚川・静岡構造線」と呼ばれる大断層帯に近接している。また、糸魚川・静岡構造線は内陸直下型地震の発生確率が極めて高い断層帯とされており、今回の能登半島地震による地殻変動によって、発生確率が一段と高まった可能性がある。
②今回の能登半島地震は、太平洋側から日本列島の地下に潜り込むフィリピン海プレートがもたらした流体(水)が、活断層の割れ目に入り込むことによって起きたと考えられる。同様の現象は、構造線に近い岐阜や長野の活断層でも起きている可能性が高い。
そして地震学の専門家も、次のように警鐘を鳴らしている。
「能登半島地震の地殻変動によって緩んだ活断層の割れ目に流体が入り込めば、構造線に近接する岐阜や長野で内陸直下型大地震が多発するのは理の当然です。今後は岐阜や長野などの他地域でも、マグニチュード7クラスの大地震への備えが急務となります」
地上から目認することは難しいが、地下の変動は確実に連動しているのだ。
(石森巌)