8月31日に本サイトで報じた「コメ不足」をめぐる大阪府・吉村洋文知事と坂本哲志農水相の「場外乱闘」が、まだ続いている。吉村知事は9月2日、府庁で記者団の取材に対し、
「備蓄米を放出すると値段が下がるのでいけないと言うけれど、いやいや、すでに上がっている。これからもさらに上がる」
コメ価格の急騰を懸念し、政府に備蓄米を放出するよう再要望した。
これに対し、坂本氏は9月3日に、これまた再度の備蓄米放出拒否宣言。
「コメの取引価格は民間の取引環境の中で決まっていくものであり、政府として直接コメントするのは差し控える」
この場外バトル、勝手に裁定すると、坂本大臣の発言に分がある。というのも前回の記事が出た後、次のような情報提供があったからだ。
「北関東ではコメ不足が起きていなかったため、コメの購入に数量制限など設けていなかったのですが、新学期を前に北関東でもコメが消えた。JA幹部に詳しく聞いたら、同一集団が県内のコメを一斉に買い占めたようなのです」
店頭から消えたコメは、意外なところで見つかった。地元で売られていたのと同パッケージのものが、フリマサイトで市場価格の2倍の値で売られていたのだ。吉村知事の発言を取り上げたテレビ報道が「コメの飢餓感」を煽ってから、北関東でもコメの買い占め団、転売ヤーが登場したというのだ。
そのフリマサイトを確認すると、確かに栃木産や茨城産のコメが5キロ5000円以上の値をつけている。岩手産の新米15キロに2万円をふっかけているアカウントもあった。大阪とは細かい状況、地域の違いはあれど、吉村知事によるとんだ「マッチポンプ」とでも言うべき様相なのである。
新米といえど、脱穀から時間が経てば、どんどん味は落ちていく。フリマサイトで強気な値段をふっかけていたアカウントは、時間の経過ともに売値を下げている。ここで国の備蓄米を市場にドーンと放出すれば、大迷惑な買い占め集団、転売ヤーはさぞ大損することだろう。別の北関東の生産者は、こうも説明する。
「新米が高い、高いと言いますが、消費者はコメの等級を見ていない。2024年産の新米と2023年産では、等級が違うんです。というのも、昨年は猛暑のせいで全国のコメは軒並み、等級が落ちてしまった。毎年コメ作りの苦労、手間は同じなのに、猛暑だった昨年はコメの等級とともに、収入も暴落したのです」
これでは日本の「亡国減反政策」に応じず、真面目にコメを作ってきた生産者ほどやりきれない。今年は昨年の猛暑を受けて品種を変えるなど、試行錯誤があったという。8月上旬から続く品薄感の中、等級の下がったコメを買い叩いた卸に、積極的にコメを売る義理もなかろう。
日頃から生鮮食料品の値段の安さをうたっている東京都内や大阪府内のスーパーマーケットは、生産者泣かせの卸から仕入れているから、天候不順や南海トラフ緊急情報などイレギュラーなことが起きれば、コメや野菜の納入が真っ先に止まる。
安さには代償が伴う。もし消費者がコメにコスパと確実性、どちらも求めるなら米穀専門店を利用するか、「ふるさと納税」の返礼品にコメを検討するのも一手だろう。
(那須優子)