ヒゲとメガネをトレードマークに、札束をなびかせていた歌舞伎町の名物オヤジ──。ホストクラブ「愛」の創業者・愛田武氏(74)が、全財産を失い、老人ホームで孤独な晩年を送っている。伝説の「ホスト王」に何が起きたのか。
武氏と長年親交のある男性が、その窮状を訴える。
「武さんは数年前から認知症を患い、現在は老人ホームで暮らしている。月額の入居費用は9万円ほどの公共型老人介護施設で、年金でどうにかやりくりしている。貯金も資産もなく、一文無しの状態です」
売れっ子ホストとして名をはせた武氏が、ホストクラブ「愛」をオープンさせたのは71年。当時はまだ珍しかった明朗会計システムや、武氏がみずから広告塔となって積極的にメディアに出演したことで人気を集め、最盛期には系列店を含めて年商27億円を誇った。
「黎明期には、暴力団とズブズブの関係になるホストクラブも多かった。そんな中で、武社長はしつこくミカジメを求められても断固突っぱねた。トラブルになった際、そのトラブル元の関係者の前で切腹をしてまで店を守ろうとしたのは有名な話。ホストのクリーンなイメージを作り上げた功労者です」(知人男性)
クラブ「愛」とともに40年以上にわたってホスト界をリードしてきた武氏。引退後は、悠々自適の隠居生活が送れたはずだが‥‥。クラブ「愛」の関係者が語る。
「原因は愛田家のお家騒動です。長女の磨里が事実上、店を別のホストクラブに身売りしたことで、収入源を絶たれてしまった。現在も店は『愛』の看板を掲げているが、昔から知る人にとっては別の店という認識です」
「長女」といっても、武氏と磨里氏との間に血縁関係はない。武氏は84年に現在の妻・朱美氏と再婚しており、磨里氏は朱美氏の連れ子。血を分けた長男の孝氏もしくは次男の元はじめ氏が、後を継ぐものだと周囲は見ていた。だが、昨年8月に「愛」を運営する愛田観光の社長に就任したのは磨里氏だった。
「武さんは11年に脳梗塞で倒れて以降、入院生活を余儀なくされた。磨里はそんな武さんに接近して、自分を後継者にするように迫ったんです」(クラブ「愛」関係者)
「愛」の実権を握った磨里氏は、老舗をもり立てるどころか、現場に混乱を招いたという。
「磨里はお気に入りのホストに入れあげて、かなりの大金を貢いでいました。昨年9月には、6年間で1億3000万円の所得隠しを国税局から指摘されましたが、そのことと無関係ではないでしょう」(クラブ「愛」関係者)