社会
Posted on 2016年01月12日 01:55

秋津壽男“どっち?”の健康学「健康づくりに始めたランニングの落とし穴 はまってしまうと危ない中毒性にご注意を」

2016年01月12日 01:55

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 あけましておめでとうございます。今年も皆さんが健やかになれる健康学をお話ししていきます。よろしくお願いいたします。

 正月の風物詩・箱根駅伝が終わりましたが、最近はマラソンを主催する自治体が増えました。2月に開かれる東京マラソンの抽選倍率など10倍以上。まさにマラソン大国と言っていいでしょう。

「健康にいい」とのイメージから市民ランナーは増える一方ですが、では健康を考えた場合、ランニングとウオーキング、どちらがよりリスクが低いでしょう?

 これは断然ウオーキングです。実は、ランニングとは全ての年代を通して最も突然死が多く、医者の立場からはオススメできないスポーツなのです

 さらにランニングには中毒性がついて回ります。いわゆる「ランナーズハイ」と言われるもので、長時間走り続けると気分が高揚して多幸感に包まれますが、これは「脳内麻薬」に由来します。脳内の神経伝達物質=エンドルフィンが分泌され、気づかぬうちにクセになり、走らないとムズムズしてきます。これが要注意です。

 健康のためにやっていたランニングがいつしか病みつきになり、天候や体調にかかわらず走りたい衝動に駆られます。ハーフマラソンがマラソンになり、トライアスロンになり、気がつけばアイアンマンを目指す。それほどのめり込む人もいますが、雨の中や寒さの中で走り続けると、思わぬ突然死を招くのです。

 アメリカの医療専門誌で、興味深い研究結果が発表されました。死亡リスクを高めないランニングは、次の3つの条件を満たす必要があるとのことです。

「走行距離が1週間に32キロを超えない」

「走る速度が時速8~11.2キロ」

「走る回数が1週間に2~5回以内」

 以上の条件を超えて走ると「寿命を延ばす効果はなくなる」と結論づけられていましたが、時計を見ながらのタイムアップを目指すランニングなど、この条件を逸脱するでしょう。

 ランニングを途中でやめるのは勇気のいることですが、息苦しいと感じたら絶対無理をしないことです。

 加えてオススメできないのが早朝ランニングです。

 人間の自律神経とは、交感神経と副交感神経という正反対の働きをする二つの神経から成り立っています。夜はリラックスした状態で眠りに就くため副交感神経が勝り、朝目覚めると活動的になるため交感神経がしだいに優位になります。つまり朝は血圧が上がり、夜間の脱水も加わって血液が凝固しやすい状態ですが、このままランニングをすると、脈拍が増えて血圧がさらに上昇し、心筋梗塞のリスクが高くなるのです。

 心臓に持病のある方は、早朝ランニングなど絶対にやらないでください。

 逆にオススメできるのが、途中で休めるうえ、中毒性のないウオーキングです。こちらは体に大きな負荷がかからず、体内に取り入れられた酸素が体内脂肪やグリコーゲンを燃焼します。さらに筋肉も適度につくので基礎代謝量が増え、脂肪燃焼も助長されます。心臓や肺の働きがよくなった結果、新鮮な血液を全身に送り出せるため、生活習慣病の予防やストレス解消なども期待できます。

 ランニングもウオーキングも、自分の体と相談しながらの運動ならいいのですが、無理に頑張りすぎるとスポーツとなり、突然死のリスクを高めます。

「スポーツではなく運動をする」と心がけてください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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