趙氏によれば、数年前に「Kグループ」と呼ばれる強力な“窃盗マフィア”のファミリーが残留孤児の家族を装って来日。裏の在日中国人社会で、急速に勢力を拡大させているという。
「黒竜江省の最東部に位置する地方都市・佳木斯(ジャムス)出身だと言われています。佳木斯市は“泥棒の街”として中国全土にその名をとどろかせていて、多数の“窃盗ファミリー”が拠点にしている。そのうちの一つが日本に出張ってきているわけです」(趙氏)
Kグループが標的にしているのは、日本の振り込め詐欺グループだ。
「日本の半グレ連中や現役のヤクザが、彼らに詐欺グループの拠点や幹部の住所などの情報を流しているそうです。Kグループの実行部隊は、その情報をもとに、アジトや幹部宅を急襲。時にはそのまま拉致して山奥に連れて行き、いきなり目玉をナイフでくりぬいて抵抗心を削ぎ、カネのありかを吐かせる、なんて話も聞いたことがありますね」
趙氏は笑みを浮かべながら言うと、スマホに1枚の画像を表示させた。そこには目隠しをされ、後ろ手に縛られたホスト風の男の姿が写っていた。
「知り合いの中国人から回ってきた画像です。詐欺グループの幹部って話ですよ」(前出・趙氏)
ターゲットがごく一部の犯罪者集団ならば、我々一般人がおびえる必要はないかもしれない。だが、水面下では犯罪を誘発する新たな需要が生まれつつある。
「爆買いのツアー観光客だけでなく、中国の大金持ちたちもこぞってお忍びで来日しています。その目的は骨董品やニシキゴイ、土地や建物、地方の優良企業などの買いあさりですよ。先日も、中国の大手IT企業の社長が都内にある美術館を訪れて、数千万円もする盆栽を買っていった、と話題になっていましたね」(前出・趙氏)
そこで、中国人の窃盗グループが目をつけ始めたのが、地方の名家などに眠る日本刀や書画、陶磁器といった高価な骨董品の類いだという。
「旧家とそこに眠るお宝の目録をリスト化したデータを売り歩いている中国人もいます。リストの真偽は不明ですが、実際にKグループも動き始めているという情報もあり、今後は地方の金持ちや美術館を“狩る”のがブームになるかもしれません」(前出・趙氏)
窃盗、強盗といったストレートな犯罪ばかりか、麻薬の密輸や密売に手を染める者もいる。
「覚醒剤や危険ドラッグの原料の密輸に関わっている在日中国人は今も一定数います。クスリの場合、どうしても日本の暴力団と手を組まなければならず、トラブルも多いし、捕まるリスクもデカいので、日本人が考えているほど多くはありません」(前出・趙氏)
一方で、中国の麻薬ビジネスに巻き込まれたという日本人男性A氏から話を聞くことができた。
「日本に流通する違法な薬物の大半は中国製と聞きました。一番のお得意様は日本人ということで、中国で“味見”のバイトをしてきたんです」
関西在住の彼は中国マフィアの男性に頼まれ、中国で開かれた麻薬密売組織の会合に出席。そこで「麻薬テスター」として危険ドラッグ使用の“実験台”になったという。
「クスリの持続時間、使用後の感覚を事細かに記録しました。キマっている状態で紙にアルファベットを書いたり一定の距離を歩いたりなど、まるでモルモット状態。ぶっ通しでドラッグを打たれた日には、心臓がバクバクして、正直、死ぬかと思いましたよ」(前出・A氏)
会場となったのは最上級ホテルのスイートルーム。数日間のアルバイトで、高額報酬に加えて高級腕時計やブランド品の衣服までプレゼントされた。
「自分のような日本人テスターがお墨付きを与えた“商品”だけが、日本に出回ると聞きました」(前出・A氏)
こうしている間にも、中国から違法な薬物が日本に流入しているのだ。