社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「寝起き直後は危険な“朝風呂”。起床後1時間は安静にすべし」

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 夏になると汗をかく機会が多くなります。特に熱帯夜など大量の汗をかいた朝には「すっきりリフレッシュしたい」と朝風呂に入る人も少なくないでしょう。

 さて、ここで質問です。熱い風呂に入る場合、起床後と就寝前のどちらが健康的でしょうか。

 以前の連載で「早朝ランニングは体に悪い」と述べましたが、その理由は寝起き直後の急激な血圧上昇と密接な関係があります。

 朝起きて「今日も頑張るぞ!」と気合いが入ると、興奮時に活発になる交感神経が優位に働きます。すると頭もシャキッと冴え渡り、仕事や勉強など集中力も高まります。しかし、その一方で、朝の時間帯の血圧は1日で最も高くなる傾向があります。

 脳梗塞や心筋梗塞などの発症が、時間帯としては早朝の午前5時~10時に多く見られるのも無関係ではありません。起床後すぐにランニングや運動をすることで、血圧が上昇。体に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

 つまり、寝起き直後はリスキーな時間帯であり、少なくとも起きてから1時間はゆったりと過ごす習慣を守ることで、緩やかな血圧の上昇となり、急な病気の発症を防ぎます。寝ぼけた脳が目覚める段階では、運動や入浴など汗をかく行動は避けたほうが無難、と覚えておきましょう。

 一方、仕事を終えてリラックスすると睡眠に備え、今度は副交感神経が優位になり、血圧もゆっくりと下がっていきます。夜の入浴は、心身のリラックス効果を促進します。精神的にはストレス解消、肉体的には筋肉の疲労を癒やしてくれることで、いい眠りにつながります。つまり入浴のタイミングは、朝よりも夜に入るほうが理にかなっているのです。

 温泉旅行に出かけた際に、起きてすぐに入る朝風呂を楽しみにする方は多いかもしれませんが、高齢者や高血圧の人にはおすすめできません。時間に余裕を持って、「温泉に何度も入らないと元が取れない」といった考えは改めたほうがいいでしょう。

 また、サウナで水風呂と交互に入る猛者も見受けられますが、心臓が丈夫な若者にとっては「自律神経のトレーニング」になりますが、中高年は避けたほうが無難です。脳梗塞を患った長嶋茂雄さんや西城秀樹さんもサウナ好きだったそうですが、寒中水泳や水風呂は、少なくとも還暦を過ぎたら避けるべきです

 日本高血圧学会のガイドラインによると、血圧の上(最高血圧)と下(最低血圧)は次のとおり、5段階に分けられています。

・正常値 上が130~139かつ下が85~89

・正常高値血圧(高血圧の一歩手前) 上が130~139または下が85~89

・軽度高血圧 上が140~159または下が90~99

・中度高血圧 上が160~179または下が100~109

・重度高血圧 上が180以上または下が110以上

 血圧測定を日課にしている人はわかると思いますが、血圧は日によって変化しやすく、緊張時や運動後は高くなる傾向にあります。深呼吸をしてリラックスした状態で、数回測った際の平均値が「正しい数値」となります。血圧を知ることで自分の健康状態を知ることができるので、ぜひ、ふだんの生活にも血圧測定を取り入れてみてください。

 低血圧は目覚めが悪い、と言われますが、血圧はできるだけ低いほうがいいのです。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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