個々に委ねることなく、青森は県をあげて「短命県返上」のプログラムを推進している。参考にしたのは長野県だ。
「生活習慣ですから、いきなり変えるのは難しい。長野県では、かつて朝昼晩、さらに3時のおやつにも野沢菜を食べ、塩分過多になっていた。これではいけないと、農家のお嫁さんなどを『保健補導員』にし、地道に健康教育を行った。例えば野沢菜の食べ方。それまで、大皿盛りで食べ放題が主流だったのを、小皿に1人前ずつ取り分けるように指導することで減塩に成功しました」(長田氏)
青森では学校教育に力を入れている。
「まずは小学生に向けて学校で生活習慣病の恐ろしさを訴える長寿教育を行い、そこから家庭に帰った児童が親の世代に食生活の改善を促すよう、効果を図っている。また、冬場の運動不足を解消するためにショッピングモールと提携し、歩くとポイントがたまるという取り組みも始まった。今後、青森がワースト1位を脱する日は近いでしょう」(前出・長田氏)
短命県の返上は1日にしてならず、日々の積み重ねがあって実現可能となるのだ。
塩分の取りすぎが直結する「高血圧」。こちらも、数値が高いまま放置しておけば、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こしかねない重大病だ。週刊アサヒ芸能では厚生労働省が発表した「平成21年地域保健医療基礎統計」の患者数から県別ワーストランキングを算出した。結果は、山形県、福島県、島根県の順となった。
「山形県は野菜の摂取量が全国で3位と高いのですが、反対に食塩の摂取量も多く、男性で全国3位、女性も4位です。これは、2位の福島にも当てはまりますが、冬場に野菜のなくなる東北地方の漬け物文化が影響していると考えられます。もちろん、各市町村では減塩キャンペーンを展開していますが、全国的に減塩ブームの流れがある中で、いまだにワーストの上位に残る結果になっています」(矢野氏)
高血圧と同じく、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる「高脂血症」になりやすい県をはじき出すと、ワースト3は香川県、島根県、新潟県の順となった。
香川の県民食といえばうどんだが、付け合わせで脂っこい天ぷら、いなり寿司、巻き寿司などを一緒に食べるのが一般的だ。
「高脂血症は、お酒の飲みすぎも関係してきますが、うどんに関連して言えば、一緒にライスを食べれば“ダブル炭水化物”で糖分の取りすぎになります。またあわせて、天ぷらを1つでなく山盛り、流行の肉うどんなどを食べれば糖分と脂質の取りすぎになってしまう」(松井氏)
香川県では、13年に全国的にも異例となる、小学生を対象にした血液検査を行い、過剰な炭水化物の摂取に警鐘を鳴らしている。
「香川県は野菜摂取量が全国45位と圧倒的に低い。うどんの付け合わせは天ぷらではなく野菜にするべきでしょう」(前出・矢野氏)
うどん県を返上して、野菜県にスイッチしてはどうか。