仏に仕え、道を悟ろうと修行を重ねる僧侶はメタボとは無縁の存在、と誰しもが思うところだが、仰天ニュースが先日報じられた。
なんと「タイ僧侶の半数がメタボ」だというのだ。
修行は厳しくスリムになるのではなかったのか。
英国のインペリアルカレッジロンドンと世界保健機関(WHO)の研究チームの調査によれば、世界の肥満人口は1975年から40年間に急速に増えており、肥満人口は6億4,100万人(医学誌「ランセット」2016年4月)。
そして「有効な対策を施さないと、2025年までに男性の18%、女性の21%が肥満になる」と、インペリアルカレッジロンドンのマジッドエザティ教授は予測している。厚労省の肥満に対する見解は次のとおりだ。
「肥満は2型糖尿病や高血圧、心臓病などの疾患を引き起こす。有効な対策をしないと、医療体制の崩壊を招く要因となる」
しかしタイの肥満率は世界で135位と健康国。にもかかわらず、バンコク・チュラーロンコーン大学で実施された研究の結果によるとBMIが25以上で「肥満」と判定された僧侶は48%に上り、42%が高コレステロール、23%が高血圧、10%は糖尿病だったというのだ。
そしてその原因が僧侶の修行の一つ「托鉢」にあったというのだから驚く。
僧侶にご飯やお菓子などをさし出す喜捨は「タンブン(功徳をつむ)」と呼ばれる大切な行為。人々はご飯や惣菜、デザートを次々に差し出す。そして僧侶には食べ物の拒否権がなく、喜捨としてもらった食べ物はすべて食べないといけない。同大学の調査チームはこう分析している。
「経済成長に伴う食生活の変化から、市民がささげる供物が高カロリー化したのが原因」
以前は家庭料理が中心だったものが、今は市販の油っこいものや甘いものが増えていることによるという。
さらに僧侶は肉を食べてはいけないことになっているのだが、喜捨としてもらったものなら食べてもいいというし、食事は朝と昼の2回なのだが、その間に飲む飲み物も供物の糖分豊富な清涼飲料水。さらに僧侶は激しい運動も禁止されている。国は僧侶のメタボ対策に特別予算を組むほどなのだ。
このタイ僧侶の肥満事情は他山の石とすべきだろう。江田クリニック・江田正院長も言う。
「食生活に気を配らないと太るという典型的な見本です。食事と運動を心がけること。メタボは“百害あって一利なし”です」
好きなものを好きなだけ食べることは仏様も許してはくれない!?
(谷川渓)