九州での巨大地震で憂慮されるのが、佐賀県の玄海原発(九州電力)と鹿児島県の川内原発、四国は愛媛県の伊方原発である。
中でも心配されるのが玄海原発1号機だ。
地元記者が言う。
「玄海原発1号機は日本で最も危険な原子炉の一つと言われています。1号機が運転を開始したのは36年前のこと。その鋼鉄製の原子炉圧力容器は、老朽化で非常にもろくなっている。巨大地震発生の際は緊急炉心冷却装置が作動して原子炉を冷やす仕組みだが、これが働くと圧力容器の鋼の壁が破断する可能性があるのです。熱いコップに冷たい水を入れると、急激な温度変化に耐えられなくなった圧力容器が割れてしまう。長年中性子を浴びて粘りを失ってしまった鋼にも、ガラスと同じことが起こるわけです」
福島第一原発は緊急炉心冷却装置が作動しなかったため大規模な過酷事故につながったが、玄海原発は作動したらしたで大惨事につながる可能性があるのだ。
九州きっての大都市、福岡市は玄海原発から50キロ西方にある。博多湾から玄界灘に面した一帯は西風がよく吹くため、事故が起きようものなら、まともに放射能の被害を受けることになる。
昨年、海江田万里経済産業相(当時)が、「原発の安全は保証します」と言ったが、いったい何を根拠にそんな寝ぼけたことを言っているのか。
「玄海原発に隣接する城下町・唐津などは事故が起きれば死の町になります。地元の玄海町は交付金をもらってホクホクですが、周辺地域の将来に広がるのは放射能への不安ばかりです」(前出・地元記者)
では、川内原発はどうだろうか。
川内原発は、敷地内には活断層が走っていないと結論づけられたものの、近くを中央構造線の断層帯が走っている。
社会部記者が語る。
「実は伊方原発と川内原発は中央構造線に乗っかっています。関東から九州へ、西南日本を縦断する大断層系なんです。地震調査研究推進本部が発表した地震の規模や発生確率は地域によって異なるが、四国から九州にかけて中央構造線が走るところは、おおよそ2000年に1回動くことがわかっています。以前、高知大学の研究者が伊方原発の脇の海底断層を調査したところ、伊方原発建設の時にはわからなかった断層が2000年おきにものすごい活動をしていたことがわかった。直近のズレは二千数十年前。もういつ動いてもおかしくないということです。その構造線が四国の北側を通り、伊方原発の付け根から海に入り、それが川内原発近くの海の所に抜けているわけです」
伊方原発も川内原発も被災は時間の問題だというのだ。
「もし鹿児島で原発事故が発生したら、放射能は季節風により日本中を覆う。それこそ、日本沈没です」(前出・地元記者)
放射能による被害が発生すれば、それはもはや市民による「防災」の域を超えてしまう。