「証拠を出せ」といきまく小平。が、その場で再生されたホテルの防犯ビデオには小平がタクシーを蹴った姿がバッチリ映っていた。
すると、それまで強気だった小平は急におとなしくなった。パトカーに乗せられ、警察官に事情聴取されるや、
「運転手さんに謝罪したい」
と言ったが、もはや後の祭り。
「その後、私は会社に日報を提出し、中央署で朝の8時まで事情を聞かれたあと、被害届を出して受理されました。でも刑事さんから聞いたんですが、その父親が息子に輪をかけたような無礼千万な男で、警察に電話してくるなり、私に謝りたいと言うのではなく、『示談にしたい、相手の連絡先を知りたい』などと言ったらしい」(長内さん)
怒りがぶり返した長内さんは家に帰ってひと眠りすると、大手ゴルフ雑誌2社とスポーツ紙1社に小平から受けた侮辱を訴えたが、スポーツ報道関係者の“身内の事情”もあったのか、相手にされなかったという。しかたなく日本のプロゴルフツアーの試合について主催・主管を行っている組織、日本ゴルフツアー機構に電話した。こちらが長内さんから告発の電話を受けたのはそのあとで、今回、小平の狼藉の一部始終が初めて明かされた形だ。
記者が、千葉の自宅に長内さんを訪ね、事の顛末を聞いている時には、こんな一幕もあった。小平智と父親の健一氏(74)、そして日本ゴルフツアー機構の職員が取材の最中に現れたのだ。「このたびはまことに申し訳ありません」と3人は深々と頭を下げたが、記者を見て怪訝な顔をした。
「アサヒ芸能です」と記者が名乗り、長内さんが「アサ芸に書いてもらうんだ」と言い放つと、表情が凍りつき、それから30分間、3人はただ頭を下げるばかりだった。が、長内さんは追及の手を緩めなかった。
「お前、ゴルフ場でも“卵を産んでる”んじゃないか?」
と鋭く切り込んだのだ。
ゴルフは紳士のスポーツ。スコアは全て自己申告だ。「卵を産む」とは、競技中、誰も見ていないからと球の位置を変えたりするなどの不正を指す。小平はタクシーのドアを蹴り上げておきながら、証拠の映像を見せられるまで容疑を認めようとしなかった。長内さんは、その不誠実な態度を問題にしていたのだ。
「とんでもありません。そのようなことはありません」
と、小平本人はその場で否定した。が、
「証拠がなければ、平気でウソをつく。ゴルファーが絶対してはならないことです」と前置きして、ゴルフジャーナリスト協会顧問の菅野徳雄氏が語る。
「ゴルフには審判がいない。自分で自分を律する気持ちと相手を思いやる気持ちが必要です。だから、僕はゴルフは人間教育にいいと勧めるんですが、小平のやったことはゴルフを通じて養われる人間像とは真逆のこと。これは問題です」
謝罪に現れた日本ゴルフツアー機構の職員にあらためて連絡を取った。
──どうして彼はウソをついたのか。運転手さんも「素直に謝れば水に流した」と言っているが。
「そこまで承知していません。小平には『乱暴なことをするな』と厳重注意をしました」
小平にあらためて話を聞きたいと、この職員を通じて連絡すると、まる1日以上経過して、本人から、
「深く反省をしています。ただマスコミとの直接の取材は遠慮させてください」
との短いコメントが返ってきた。