今年、デビュー40周年を迎えた池上季実子(54)。その長い女優生活の中で、2本の高視聴率ドラマに出演している。まさに“持っている”女優と言うにふさわしく、出演当時、「絶対数字を取る!」と予言し、そのとおりにもなったという。貴重な証言を聞こう。
「とにかくハードな毎日でしたね。朝は7時から横浜・緑山スタジオ入りし、翌朝の4時くらいに自宅に戻り、また朝7時に緑山入りする繰り返し。みんな元気だなーと思うくらいパワフルでした。連日寝不足だったけど、楽しかったですね」「男女7人夏物語」(TBS系)は、7人の男女のひと夏の出会いと別れを描いた連続ドラマ。全10回放送で平均24.2%、最終回31.7%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録した。放送当時の86年、若い男女の恋愛を真っ正面から描いた初めての恋愛ドラマだった。また、お笑いブームで人気者になった明石家さんま、片岡鶴太郎のドラマ出演、さんまと大竹しのぶの熱愛など話題満載で、世間の注目を集めた。
「さんまさん、鶴太郎さんが『笑っていいとも!』のレギュラーで、朝10時半に抜けるんです。帰ってくるのは夜9時過ぎ。その間2人のいないシーンを撮って、そろったところで7人のシーンを撮るんです。ランスルー(通し稽古)が終わる頃、脚本の改定が来て、もう1回セリフ合わせして。2、3回やっただけですぐ本番でした」
いくら役者といっても、そんなにすぐにセリフを覚えられるものなのか。
「出演者全員のキャラクターが『自分のことを知ってるの?』というくらい、それぞれの性格に近かったから、抵抗なくセリフが体に入ってしゃべれたんですよ。7人がみごとに仲よくて、いつもワイワイやってました。そういう現場は少ないんです。出番のない人たちが集まっては、おしゃべりしてましたから」
とはいえ、長すぎる「さんま待ち」「鶴太郎待ち」にしびれを切らす日々だったのも確か。しかし、池上にとって出産後初の女優復帰ドラマで、掛け持ちなしの全力投球。気合に満ち満ちていたという。
「天ぷら屋さんで日本酒を飲むシーンの時、下戸のさんまさんはずっとお水を飲んでたんです。本番前、美術さんに頼んで、本物に取り替えちゃいました。本番でくっと飲んださんまさん、『うっ』という顔して。みんなそれを見ても知らん顔でそのまま芝居。あの時のさんまさんの顔、おもしろかったな。本番終わって、みんなで大爆笑。イタズラはよくやりましたね」
目を白黒させながらも芝居を続けたさんま、あっぱれな役者根性だったようだ。
当時週刊誌で「抱かれたくない男ナンバーワン」に選ばれた鶴太郎は嫌われ男の筆頭だったが、池上をいちずに思う心優しきブサメンを熱演、演技派俳優にイメチェンした。
「鶴太郎さんはすごく真面目で謙虚な方。ただ、役者が考える感覚とは違う突拍子もないことをやったりするから、プーッと噴いちゃうことがよくありました。おふたりがしゃべるだけで雰囲気がよくなるみたいな、そういうムード作りをしてくれました」
池上は水谷豊の妹役を演じた連続ドラマ「熱中時代」の最終回(日本テレビ系・78~79年)で、40.0%を記録した瞬間も体験している。
「水谷さんにもさんまさんにも『これ、絶対数字取る』って言ったら、両方とも取っちゃって。高視聴率を取れた秘密は、この間まで私がハマっていた『半沢直樹』と同じだと思います。ドキドキワクワクさせてくれて、次が見たくなる。その当時もまったく同じで『録画じゃイヤ、今見たいの』という気持ちの視聴者ばかりだったんですよ。出演者やキャストさえ先を争って見たくなる。そんなおもしろいものをやれば、数字は上がるんです」