全国リーディングNO1騎手となり、海外GIでレコード勝ちしても、なぜか「さすが福永!」の声は聞かれない。人気、知名度、実力評価──あらゆる分野で常に天才・武豊の後塵を拝してきたのはなぜか。それは万年NO2男の「欠陥騎乗」と「失態レース」ぶりを見ればわかるのだ。
4コーナーを回って直線に向くと、武豊(45)のダービー馬キズナがスーッと加速し、上がっていく。単勝1.9倍の1番人気、福永祐一(37)が騎乗する菊花賞馬エピファネイアは、外からキズナに並ばれるやいなや抜き去られると、ようやく進撃を開始。だが両者の差は広がるばかりで、キズナは先頭でゴール板を駆け抜けた──。
4月6日、産経大阪杯(阪神・芝2000メートル・GII)のハイライトシーンである。最後方待機から早めに抜け出す圧巻の騎乗で武が勝ち、福永は3着に終わった。
「何であんな後ろから行くのか不思議でした。エピファネイアは切れ味で勝負するタイプではないので、前々で競馬をして押し切るのが理想。仕掛けも遅すぎるんですよね。それで勝てる馬でないことは福永もわかっているはずなのに。明らかに失敗騎乗でした」
ベテランのトラックマンがこう振り返れば、元中堅騎手も辛口に斬る。
「3頭が固まって逃げ、10馬身ほど空いて次の集団が5頭。エピファネイアはその中、キズナの1馬身前にいた。俺なら前3頭と後方集団の間に入れる。キズナが追ってきた時、慌てないで済むからね。福永はキズナが来たのに合わせて、やっと手綱を動かしていた」
大失態を演じるレースとなった消極的な乗りっぷりの理由を、先のトラックマンは次のように説明する。
「エピファネイアの全9戦中、福永は8戦で騎乗していますが、騎乗停止中で外国人騎手(ビュイック)に乗り替わった弥生賞(13年3月3日)でものすごく引っ掛かり、4コーナー先頭という競馬をして4着に敗れた。それ以降、引っ掛かるようになってしまったわけですが、福永はそれを非常に恐れていて、ふだんの調教からも折り合い重視の優等生スタイルに変わった。だから、そのあとの神戸新聞杯や菊花賞でも引っ掛かるのが嫌だという理由で、いたずらに動かないで後ろのほうで抑えていく乗り方をしたんですよ。結局、思い切った騎乗ができないことが大阪杯の敗因でしたね」
冒険性のある強気な騎乗を避け、折り合いを優先する優等生になったのはデビュー3年目の98年、2番人気のキングヘイローで臨んだ日本ダービー(東京・芝2400メートル・GI)のトラウマからだった。
「もう1、2コーナーから引っ掛かり倒して、なんと逃げてしまった。結果、14着の惨敗。それが頭にこびりついているようで、『すごい悔しい。あの時は自分も若かったし、大失敗だった』と回想しています。それからですね、後ろのほうでとにかく折り合い重視の安全策スタイルになったのは」(競馬ライター)
これがいわゆる「キングヘイローの呪い」と呼ばれる一件であり、その後の騎乗に大きな影響を及ぼすことになった、最初の大失態なのである。
ちなみに、このダービーを制したのは、武豊騎乗のスペシャルウィークだ。
◆アサヒ芸能4/15発売(4/24号)より