去る4月2日の南米・チリ沖地震で懸念されたように、太平洋の東端のチリで巨大地震が起きると、太平洋西端の日本の三陸沖などに大津波の被害が出ることはよく知られている。ところが、地震そのものも連動しており、チリで巨大地震が発生した数年後には必ず日本でも大地震が発生していたというのだ。その戦慄のメカニズムとは──。
まずは、太平洋の海底の基本的な構造について、武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が説明する。
「太平洋の中央からやや東寄りには南北に『東太平洋海膨』と呼ばれる海嶺が走っています。その東側がナスカプレート、西側が太平洋プレートです。2つのプレートは同一プレートではないにせよ、互いに接する『兄弟プレート』と言えます」
去る4月2日(現地時間1日)に発生したチリ沖地震の現地での死者は6人。日本への津波は、岩手県久慈市で最大60センチだったが、長時間にわたる津波注意報のニュースは記憶に新しい。
このチリ沖地震は、ナスカプレートと南アメリカプレートがぶつかる地点、すなわちナスカプレートが陸側の南アメリカプレートの下に潜り込むところで巨大地震が発生している。そして、チリ沖で発生する巨大地震を追っていくと、まるで、冒頭の島村教授の説明にあるナスカプレートと太平洋プレートが何らかの影響を及ぼしているかのように、発生から数年後には、日本でも巨大地震が発生しているというのだ。
「確かに、そういう傾向はある。しかし、チリ地震は1万キロ以上離れているプレートで起きた地殻変動。なぜ、そうなのか。そのメカニズムを完璧に説明することは誰にもできません。ただ、ナスカプレートで起きた地殻変動が、日本の地震を誘発していると言えなくもない。これは非常に注目すべきことです」(島村氏)
地震予知の研究で知られる、琉球大理学部名誉教授の木村政昭氏は、チリ沖地震と日本列島の地震活動の関係を分析した。すると、興味深い事実が判明した。
「今世紀に環太平洋で発生したM8以上の大地震を見ていくと、それらの巨大地震は、太平洋を反時計回り、西から東に循環して発生していることがわかったのです。
例えばまず、2000年に太平洋の西側のニューギニア方面でM8の大地震が発生すると、01年にはその東側のチリ付近でM8.2の大地震が発生しました。その後、03年と07年には、なんと西側に戻って、北海道方面で大地震が発生したのです。
そして09年に、同じ西側のニュージーランド北方で発生したM8.1の地震から1年後の10年のチリ地震(M8.8)が東側で発生し、多くの犠牲者を出しました。そして、東日本大地震が発生したのはその翌年でした。同じ西側のニューギニア方面では13年にM8.1の大地震が発生した。さらに翌年の今年、東側のチリ沖で大地震が発生した。それが、先日発生したチリ地震なのです」
まるで、太平洋の東西では巨大地震が「キャッチボール」をしているかのようである。
「規則性から見ると、その関係は否定しきれない。そして、次の大地震は、太平洋の西側地域で発生する可能性が高いことも予想されます。東のチリ付近で大地震が発生したら、日本列島を含む西側は要注意だということになります」(木村氏)
ちなみに、1960年の史上最大のチリ地震(M9.5)の4年後、太平洋の北端のアラスカで、史上2番目の規模(M9.2)を持つ巨大地震が発生している。