衝撃的なハプニングが発生したのは、4月27日の東京競馬第10レースだった。復帰したばかりの後藤浩輝騎手(40)が前走者の妨害で、またもや落馬。頸椎骨折の重傷を負ったのだ。しかもその相手は、因縁の岩田康誠騎手(40)だった。
ターフライターが振り返る。
「実は、2年前のNHKマイルCで後藤騎手が落馬した時も斜行で妨害したのが岩田騎手でした。当時の事故は岩田騎手の過失がかなり悪質で、ファンからは『殺人騎乗』との声が上がったほど。今回は、横への動きが前回より控えめながらも2度目のアクシデントに関係者も憔悴しています」
その後、JRAから騎乗停止の処分を言い渡された岩田だが、今週の開催から騎乗停止期間が解けることとなる。気になる後藤騎手の容体をスポーツ紙デスクが話す。
「落馬後、東京競馬場から府中市内の病院に緊急搬送され、精密検査の結果、第5、6頸椎棘突起(きょくとっき)骨折と診断された。12年5月と9月の落馬でも頸椎を骨折し、昨年10月に復帰したばかりだけに心配されましたが、秋の復帰を目指せそうだということで、関係者もホッとしていました」
とはいえ、12年5月のNHKマイルCでの落馬事故も、岩田騎手の斜行が原因だっただけに、ネット上ではラフプレイに対する論争が巻き起こった。デスクが続ける。
「岩田といえば、12年のジャパンCで牝馬ジェンティルドンナとのコンビで、あの怪物オルフェーヴルを退け、優勝。直線での馬体をぶつけ合う激しい攻防が話題を呼び、岩田流の『トントン乗り』がクローズアップされたものでした」
馬の背中に尻をトントンと押しつけながら追いまくる姿勢は、騎乗姿勢が美しいとされる武豊騎手(45)のスマートな「モンキー乗り」とはまさに対照的だ。美浦トレセン関係者が話す。
「馬への負担をかけず、直線で追う時も補助のような騎乗フォームが『モンキー乗り』だけに、岩田のフォームでは馬の背を痛めるだろうという批判的意見がある。その急先鋒が藤田伸二騎手(42)で、著書『騎手の一分』の中で痛烈な批判をし、レジェンド武豊も『俺たちにはマネできない』と危険視していたという談話が紹介されています」
ネット上でも、11年8月に武豊騎手が園田競馬場で初めて「競馬トークショー」を行った時、司会者から「一緒にレースをしたくない騎手はいますか」の質問に「います。でもここでは言えません」と、即答したエピソードも書き込まれ、それが岩田騎手を指していたのではないかと噂に上ったことも。元調教師が解説する。
「岩田は常にタイトに攻める。隙を狙い、厳しいスペースでも突いてくる。JRAでは『馬2頭分』という指導も、海外なら『馬1頭分』の攻防が繰り広げられている。それは岩田だけでなく外国人ジョッキーも同じだし、藤田や豊だって攻める時はこじあけてくる。でも、岩田が前にいると怖いんでしょう(苦笑)。馬体を両膝でガチッと締めてコントロールしてない『トントン乗り』では、馬が左右によれながら走りがちになるからね。『馬1頭分』をすり抜けるには、抜かれる側の状況や技量も見定めないと怖いものです。他馬を巻き込む事故を誘発することだってある。人に迷惑をかけないことを第一に考える藤田や豊にとって、岩田の勝利至上主義に映るラフプレーは受け入れがたいし、あまり一緒に乗りたくないと思いますよ」
今やファン人気を二分する武豊と岩田だが、2人の間には微妙な温度差も感じられるという。栗東関係者が話す。
「騎乗の美しさやレースの読みであれば、やはり豊さんに軍配が上がるが、長手綱で掛かる馬を抑える岩田独特のスタイルも評価が高い。昨年のリーディングに輝いた福永祐一(37)が『岩田さんがいなければ今の自分はなかった』と公言し、若手の浜中俊(25)や藤岡康太(25)も慕っているように、騎手会長として信頼を得ている武豊に負けず劣らずの人気です。でも、肝心の2人が飲みに行くなんて話はもとより、検量室で談笑するシーンさえ、ここ数年は見てない。お互いに譲れないプライドや美学があるんでしょうね」
春のGIシリーズも、あと5戦。岩田と武豊の直接対決がターフを沸かすこととなりそうだ。