近年は芸術家として認知されているが、ウケようという芸人としての本能が暴走してしまったのか。片岡鶴太郎が天皇陛下のモノマネを披露して右翼団体を激怒させ、謝罪文を送っていたことがわかった。ところがこれで幕引きどころか、さらなる宣戦布告を食らっているのである。
「いや、全然幕引きとは思っていませんよ。向こうもそうなんじゃないですか。ウチはまだ許してないけん‥‥」
怒りを込めて力強く話すのは、長崎県長崎市に本部を置く右翼団体「正氣塾」の代表である。矛先を向けられているのは、タレント、俳優、そして画家としても活動する片岡鶴太郎(59)だった。
コトの発端は12年3月3日に遡る。この日は、都内ホテルで鶴太郎の長男の結婚披露宴が行われた。なぜか背中を丸めた姿勢でゆっくりと歩く鶴太郎が登場すると、
「本日はお忙しい中、おいでいただきましてまことにありがとうございます」
と挨拶したのである。その声、所作は天皇陛下にそっくり。それもそのはず、鶴太郎は天皇のモノマネをしていたのだから。
数々のモノマネのレパートリーを持つだけに、さすがプロの芸‥‥と思ってはいけない。披露宴出席者の一人が正氣塾幹部の知り合いだったことで、事態は急展開した。同塾の若島和美副長が状況を説明する。
「ちょうどあの時、天皇陛下がご病気をされて、心臓冠動脈のバイパス手術を終えられたばかりだったんですよ。(鶴太郎が)陛下のモノマネをしたとたん、それまで盛り上がっていた会場の空気が一瞬で変わったそうです。みんなシーンとなってしまった、と」
鶴太郎の「不敬」行為に憤慨した若島氏は程なくして、鶴太郎の所属事務所である太田プロダクション、さらには長男が経営する都内のもつ焼き店に街宣をかけ、抗議行動を行う。と同時に、10項目にわたる質問状を送ったのだった。若島氏が続ける。
「質問内容としては、歴代の天皇、ご皇室がどのような役割を果たしてきたのかを理解しているのか。あまりにも不敬じゃないですか。ご皇室のことを軽んじているわけですからね。それと、モノマネをした理由や経緯もです。これは右翼、民族派に対してケンカを吹っかけているようなものだから、我々と討論会をやろうよ、ということも提案したんですよ」
鶴太郎本人から若島氏宛に届いた回答書には、謝罪の文言がこうつづられていた。
〈三月三日は、天皇陛下の手術が成功し御退院を間近に控えておられる時であり、また、すべての国民が天皇陛下の御平癒を心から祈念していた最中でありました。そうした時期に私の長男の披露宴で天皇陛下の御言葉に似せた御報告をしたということは、御指摘の通り誠に不適切な事であったと思料し、今はこれを深く反省しております〉
モノマネに至った理由については、
〈敬愛する天皇陛下であれば、誰もが幸せな気持ちになるのではないか、という気持ちから披露したことがございました〉
そして「謝罪文」は神妙さを増していく。
〈平素より天皇陛下を尊敬する心情は持ち続けております。毎朝、天照大御神の御札に手を合わせる際には、天皇陛下の御平癒をお祈りいたしておりました〉
締めくくりにはこうある。
〈私の現在の心境は以上のとおりでございますので、面談につきましては、本書面をもって御理解いただきたく、宜しくお願い申し上げます〉
「全面降伏」することで、若島氏が提案する「討論会」への出席は勘弁してほしい、と幕引きを図ったようなのである。