社会

国家の品格・藤原正彦 戦後70年の“日本の品格”と“未来への提言”(4)東日本大震災で世界中が称賛

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── 今やアメリカの属国となり果てた日本。このままアメリカナイズされてしまうのだろうか。そうではない希望の光はどこにあるのだろうか。

 明るい兆しはあります。それを私は東日本大震災のあの大悲劇の中に見いだしました。

 今でも外国に行くと声をかけられます。「あのひどい災害の被害にあったのは、いったいどういう人たちなんだ。教えてくれ」と。家を津波で流された人が、粉雪の舞う中、食料を積んだトラックが来るのを1時間も待っている。トラックがようやく到着して、おにぎりを1個受け取ると、深々と頭を下げて礼をしている。水をもらった人は、もらえなかった人に半分分けている。そうした光景を報道で見て、世界中の人が驚き、感動しているんです。普通なら略奪が起きているところです。

 震災からしばらくは、どこの行楽地も閑散としていました。誰も花見なんかする気になれない。テレビでは悲惨な津波の映像が繰り返し流され、人々はそれを見て涙を流し続けました。芸能人やスポーツ選手はチャリティイベントを開いて義援金を集めました。

 惻隠〈そくいん〉の情や、卑怯を憎むことや、忍耐や献身など、昔から続いていた日本の美風が残っていたことが、大震災の悲劇をきっかけにわかりました。政治家や財界人や御用学者たちは新自由主義に染まってしまったかもしれないけれども、この国の名もない人々には日本の美しい国柄が残っているんです。

 文部省は小学生のうちからITだの英語だのを学ばせようと言っています。それは間違いです。そうではなくて、まず国語を小さい時からしっかり勉強させなければいけない。子供の頃から本を読んで、日本の昔からある詩や物語に感動の涙を流して、日本の文化や伝統や情緒を学ぶのが日本の国柄です。国柄を傷つけてまでの経済繁栄は追わない。経団連や御用学者にだまされて経済一辺倒になってはいけません。TPPなんてとんでもないことです。「たかが経済」と言い捨てればいいんです。

 女性の裸を見て、明日も頑張ろうという気持ちになる。アサヒ芸能読者の皆さんこそ、明日の日本をつくる希望です。

◆プロフィール 藤原正彦(ふじわら・まさひこ) お茶の水女子大学名誉教授。43年旧満州新京生まれ。新田次郎、藤原てい夫妻の次男。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。78年「若き数学者のアメリカ」で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。10年「名著講義」で文藝春秋読者賞受賞。「国家の品格」「日本人の誇り」など著書多数。

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