テリー それで目立つ存在になっていったわけだ。大久保(佳代子)とコンビを組んだのは、どんないきさつがあったの。
光浦 これはですね、話せば長くなるのですが。
テリー 聞かせてもらいます(笑)。
光浦 大久保さんとは小学校からずっと友達だったんですけど、彼女は千葉大なので千葉に住んでいたんですね。私はそもそも、大学に入ることがゴールだったので、2年生で勉強に挫折して、大学にはほとんど行ってないんですよ。
テリー 東京外語大学のインドネシア語学科だよね。
光浦 はい。外国語を学ぶ大学なので、毎日が辞書漬けの日々なんです。とにかくいつも辞書を引かなきゃいけないのに疲れちゃって。さらに仕送りだけの生活も厳しいから、バイトもしなきゃいけない。
テリー 大学生だったら、そうだろうね。
光浦 でも、バイトに行くと、いつもクビになるんです。だから働くのも嫌で。働くくらいなら、飢え死にを選ぼうと思うくらい。
テリー それでどうしたの?
光浦 ダラダラしていましたね。だから東京に出て来ても大久保さんと毎日電話して、毎日一緒に遊んでいたんです。お笑いライブや演劇を観に行ったりして。
テリー へぇー。女の子2人でわざわざライブを観に行くくらい、お笑いが好きだったんだ。
光浦 お笑いを好きなのは、私より大久保さんだったんです。
テリー じゃあ、そこで「自分たちもやってみよう」ということになったの?
光浦 いえ、そういうのは実はまったくなかったんです。私は留年が決まっていたのに、大久保さんはどこでも順応できるタイプなので、着々と卒業に向かっていて。そんなある時に、大久保さんが「スカッシュサークルに入りたい」とか言いだすんです。
テリー おしゃれじゃない。
光浦 私は「お友達が減っちゃう」と思って、「止めなきゃヤバい」と。
テリー ハハハ。
光浦 スカッシュ部入りを何とか阻止しようと思って、お笑いサークルにまず誘ったんです。そのサークルには、セミプロの先輩たちがいたんですね。
テリー うんうん。
光浦 先輩たちのお笑いライブを観て、私は「裏方になりたい」って言ったんです。「大学も別にいつでも辞めていいし」なんて思っていましたし。すると先輩が「お前たちはブスとブスなんだから、スタッフなんかになれるわけない」って。
テリー あらら、ひどいね。顔は関係ないじゃない。
光浦 「同じ裏方の能力があるなら、顔がかわいいほうを選ぶに決まってる。ブスとブスがそろった時は、オーディションに出るほうだろ!」と。
テリー そりゃまたすごい言いぐさだな(笑)。
光浦 「受かるわけがない!」と言い返したら「いや、ブスとブスがはしゃいでるだけでおもしれえんだよ!」って。
テリー ハハハ。
光浦 「ウソだぁ」と思いながら、自分はとにかくバイトも続かないし、人に対して挨拶もできなかったので、「じゃあ、あえてここで、自分が死ぬほど嫌だと感じることをやってやろう」と思ったんです。
テリー その発想になるのがおもしろいね。
光浦 自分はどこで働いてもクビでしたから、人前で漫才をしたら、何かを乗り越えられて就職活動ができるかなと思ったんですよ。
テリー それでどうなったの?
光浦 もともと私は、人の目や顔を、絶対に見られない人間だったんですね。
テリー まさか、漫才の本番でも目を合わせられなかったとか?
光浦 そうだったんです。だから床をずっと見たまま、顔を上げずに漫才をやりました。そしたら「変な女が来た」と、裏の楽屋から笑い声が上がったのが聞こえて。
テリー 歌手が後ろ向いて歌うようなもんだからな。
光浦 それでオーディションの偉い人に「お前たちはいったい前に出たいのか、出たくないのか」と聞かれて、「絶対に出たくないです」って言ったんです。
テリー 前代未聞の回答だよな(笑)。「どういうことだよ!」って聞かれたでしょう。
光浦 「これにはいろいろと事情が。社会に出るのが怖くてですね‥‥」みたいな説明をしたら「合格!」と。その時代は女の芸人さんがそもそも少なかったし、「ブスとブス」という取り合わせが初めてだったみたいで。
テリー あー、それまではだいたい「ブスと美人」という組み合わせだったと。
光浦 だから「どっちがボケかわからないほど、ひどいブスが2人来たぞ」と、合格しちゃうんです。