4月22日に東京・青梅街道で発生した交通事故により亡くなった俳優の萩原流行。萩原のバイクの前を走っていた警視庁の護送車が車線変更し、接触したのが原因ではという推測もなされている。
真相の究明には、現場検証や司法解剖の結果が重要な役目を果たすことは言うまでもない。しかし警察側は、遺族の妻・まゆ美さんに対して、あらゆる情報の開示を拒んでいるのである。
8月13日には警視庁杉並署からまゆ美さんに対し、死因が「左心房破裂」及び「多発肋骨骨折を含む、高度胸部外傷」だと報告されたという。事故から約4カ月も経ってようやく、誰にでもわかりそうな死因がやっと公開されたわけだが、司法解剖の日付については「答えられない」の一点張りだというのだ。
この対応にはまゆ美さんのみならず、誰しもが納得できないことだろう。遺族には、事故被害者の死亡原因を知る権利があって当然だと思われるが、現実はそうなっていないというから驚きだ。事件取材の経験豊富な週刊誌記者が語る。
「司法解剖結果などの訴訟に関する書類は、刑事訴訟法の定めにより、裁判前の公開が禁止されているのです。萩原さんの事故はまだ起訴かどうかも決まっていない段階ですが、捜査の一環として作成された書類は一律に“訴訟に関する書類”として取り扱われることになっています」
なんと、遺族への開示を拒んでいる根拠は“法律”だったのである。とはいえ、法律は人のためにあるのではと怒りを覚える向きも少なくないはず。実際に刑事訴訟法では、公益上の必要やその他の事由があり相当と認められる場合には、開示を認めるとも規定されている。
ただ、公益上の理由は民事裁判における裁判所命令など、ごく狭い範囲に限定されている。報道の自由や被害者遺族からの要請は“その他の事由”にすら該当しないのが現状なのである。しかも今後の展開次第では、萩原さんの死因が闇に葬られる可能性すらあるという。
「護送車を運転していた警察官が不起訴となった場合、不起訴事由は開示しないという原則があるため、司法解剖の結果も明るみに出ない可能性は十分にあります。司法解剖は捜査目的で行うものであり、遺族のために行うわけではないからです」(前出・週刊誌記者)
これでは故・萩原流行も浮かばれないことであろう。いま国会では安保法案の審議が進んでいるが、遺族の思いを逆なでするような法律を改正することも、いち早く取り組むべき課題かもしれない。
(金田麻有)