「おっさんがただメシ食ってるだけのドラマです。何にも変わり映えしません」
例によって主演の井之頭五郎役・松重豊は淡々と語った。たしかにドラマチックな展開があるわけでもなく、企業競争も恋愛も奇跡のメスさばきも一切登場しないのに、早くも10月から「season5」に突入したのが「孤独のグルメ」(テレビ東京系)である。
深夜帯のドラマだが、その人気はとどまるところを知らず、12年1月の初回放送からハイペースで5クール目を迎えた。
主演の松重は、これが初主演ドラマではあったが、その役柄とプライベートはまるで違う。原作の五郎が「酒は飲めないが大食漢」であるのに対し、実際の松重は「酒好きで年齢相応に小食」である。そのため、ともすると「焼肉3人前」にも及ぶ食べるシーンのロケは、松重が「格闘技」と称するほどである。
そんな“当たり役”ではあるが、ひそかに「season3」の直後あたりから降板を考えていた。それでも、周囲の期待から言い出せないでいたが、今回はさらに“上”からの命令が下ったという。
「何としても『孤独のグルメ』をドラマ24の10周年記念作品に!」
テレビ東京の社長みずからの号令だったというのだ。たしかに「孤独のグルメ」は近年の製作委員会方式ではなく、テレビ東京の直接の製作という希少パターン。オンエア後もDVDボックスなどの売上げは順調で、今や同局を代表する看板ドラマに成長。
「おっさんがメシ食ってるだけ」なのに、周囲の皮算用ははちきれんばかりに膨らんでいる。