今後、マイナンバーには民間企業も参入し、あらゆる生活情報が結び付くことが想定される。情報が金になる現代社会で跋扈するのが、いわゆる悪徳業者。10月6日には、まだ通知が届いていないにもかかわらず、70代の女性が「マイナンバー詐欺」の被害にあっていたことが判明した。
まず、公的な相談窓口を名乗る人物からの電話でニセのマイナンバーを伝えられる。その後、別の人物から「公的機関に寄付をしたいのでマイナンバーを貸してほしい」と言われ、教えてしまった。翌日、寄付を受けた機関を名乗る人物から「マイナンバーを教えたのは犯罪だ」と現金を要求され、郵送と手渡しで数百万円を支払ったという。
同様の犯罪は増加していく一方だと、牧野内総合法律事務所・水永誠二弁護士は言うのだ。
「『あなたの個人番号が流出しています。変更するので今の番号を教えてほしい』などという電話がかかってくるでしょう。今後、個人番号カードと保険証などが一体化されると、高齢者はどうしても作らざるをえなくなってくる。彼らや認知症の方などは格好のターゲットにされます」
詐欺にあい、漏洩が判明したのであれば、番号の変更は可能。だが、最も怖いのは、本人がまったく気づかないうちに番号が盗まれているケースである。水永氏が続ける。
「個人でいくら気をつけても、情報漏洩からは逃れられません。民間の情報管理は精度の差が大きく、疎い個人病院から漏れるなど、さまざまなケースが考えられます。中には人権侵害につながりかねない病名が漏れることもありうる。あるいは、流出した番号をもとに個人番号カードを偽造して勝手にクレジットカードを作り、本人に成り済まして使用、大量の支払い請求書が来ることもあるでしょう」
いつの間にか流出したマイナンバーは、高値で売買される可能性が高い。
「消費者金融業者などは債務者のマイナンバー名簿を欲しがります。名前や性別を変えても追跡できますからね。偽名での借り逃げを防げるだけでなく、取り立てる際にも重宝する。利用価値が高ければ高いほど、値段は高くなります。財産リストや健康情報と結び付けば、さらに値段は上がるでしょう。そうなると、ブラック企業などが大量にアルバイトを雇い、個人情報とともに悪徳業者に売りさばくケースも起きかねません」(前出・水永氏)
経済アナリスト・森永卓郎氏も、被害を危惧する。
「番号が流出すると、マイナンバーを中心に、買い物情報、趣味などありとあらゆる情報が載せられていきます。原則、番号は一生変わらないので情報は蓄積を続け、個人のデータベースが容易に作られるわけです。業者からすると、押し売りや寄付要求、恐喝などに使える。悪徳業者にとっては宝の山です」
1つの番号が流出することで、私生活の全てがまる裸にされる。カード1枚に細心の注意を払い続けなくてはならないのだ。