テリー そんなに忙しい中で恋愛はどうしてたの?
林 する暇がないですよね。恋愛どころか遊ぶ暇だってないんですから。車で移動中に、原宿のあたりをカップルが、あの頃はやっていたVネックのテニスセーターをペアで着て歩いてたんですよ。それを見ながら「私もペアルックしたい、手をつないで歩きたい」って思ってましたね。相手もいないのに。
テリー じゃあ、初めて彼氏ができたのは?
林 ですから、(黒澤)久雄さんと結婚するまで、彼氏はいないんですよ。
テリー あっ、そうなの? 未体験のまま結婚したんだ?
林 そうですよ。
テリー 握手しましょう!(と林さんの手を握る) こんなにうれしい話はありませんよ!(笑) 久雄さんとはどこで知り合ったんですか?
林 「おはよう!こどもショー」の司会を久雄さんがしていて、私がゲストで「素敵なラブリーボーイ」を歌いに行ったんですよ。そうしたら何だかすごく気に入られて、「草野球チームを持ってるから応援に来てよ」って誘われまして。
テリー さすがにモテる男は手が早いな(笑)。
林 でも、野球を応援する前に久雄さんがやってたバンドのライブを広告代理店の人たちと観に行く機会があったんです。で、ライブ後にみんなでお茶をした時に「電話番号を交換しようよ」って言われて「はーい」みたいな。
テリー その時は寛子ちゃんにも、その気があったの?
林 いえ、そんなの全然ないですよ。当時、私は高3ですから、みんなと楽しめればいいや、ぐらいの感じで。でも、明日から3学期の期末試験で、夜なべして勉強している時に久雄さんから電話がかかってきたんです。しかも夜中の3時にですよ。
テリー 初めてかけるにしては、かなり遅いね。
林 そうでしょ? 私も試験じゃなかったら起きてないですよ。で、「こんな時間に何してるんですか?」って聞いたら「俺にとってはまだ序の口だ」って。それで、「この不良が!」と思って「お母さんが心配するでしょう」って言ったら、その言葉に向こうはクラっときたみたいです。「なんて純粋で心がキレイな子なんだ」って(笑)。
テリー そうすると、久雄さんの印象は最悪だよね。それでも結局つきあうことになるんだ?
林 恋愛経験もなく、結婚願望を持つ前にさらわれた感じですかね。向こうも「だまされた」って言ってますけど(笑)。
テリー どのぐらいつきあって結婚したの?
林 2年ぐらい。それで23年目に離婚しました。
テリー 原因は何だったんですか?
林 ひと言では言えないんですけど、今考えると、私のほうが光の速さで大人になっちゃったんでしょうね。久雄さんはお父さん(黒澤明監督)と二人三脚で映画を作ってる人で、どこか現実味がないというか、ポワ~ンとしてるんですよ。それが現実的な主婦とか母親の立場からするとイラッとするんです。それで何度もケンカになったんですけど、ある時から私、ケンカするのをやめたんです。
テリー それは、言っても通じないから?
林 お互い見てる風景が違っているんだなと気づいて。で、私から「別れたいんだけど」って言ったんです。
テリー 久雄さんは何て言ったの?
林 「あ、そう」って。「理由ぐらい聞け!」って思いましたけどね(笑)。でも、そのあとに「俺もこのままじゃいけないと思ってた」って言ってくれたから、私の気持ちをわかってくれてたみたいですけどね。