プロレスファンにとって、毎年年明け1月4日といえば、新日本プロレスの東京ドーム興業である。
今年のメインは、王者・オカダ・カズチカに挑戦者・棚橋弘至が挑むIWGPヘビー級選手権。そしてセミファイナルにも注目カードとなる、IWGPインターコンチネンタル選手権が組まれ、中邑真輔とAJスタイルズの初シングルが実現する。
ところで、このAJは、新日本プロレスに来日した歴代外国人レスラーの中でも屈指の実力者として評価を集め、IWGPヘビー級王者を2度戴冠するなど、今や新日本のリングに欠かせないトップスターである。
ところが、今夏に開催された「G1クライマックス25」の熱気も覚めやらぬ中、米メディア「レスリング・オブザーバー」の取材を受けたAJが、なんと新日本プロレスの裏側を何の気のてらいもなく暴露していたのである。
G1でのオカダ戦を評価するインタビュアーが、「ああいう試合は何人くらいで話し合って作るのですか?」と質問するとAJは、
「自分とオカダと外道だけだね。海野もそばで聞いてはいるけど、そんなに大勢で決めてるわけじゃない」
と、あっさり。さらには、こんなやり取りまで──。
──自分のG1での星取り状況は、どのくらい前に知らされるのですか? だって、翌年1月の試合にまで(ストーリーが)つながっていくのですからね。
「そうだね。新日本はプロフェッショナルだから、G1の星取りは最初から全部決まっているんだろうね。でも僕はあえて聞いていないんだ。1試合1試合、どうしてほしいのかを聞いて、やっているだけだよ、まあ、振り返って見れば、見事な星取り表だと思うけどね」
過去にもベテランのレフリーが暴露本を上梓したことがあったり、台本の存在が発覚する団体があったりしたことはあったが、メジャー団体に参戦する現役のトップレスラーがここまであっけらかんとプロレスの仕組みを語るとは前代未聞だろう。
ところが、とある日本のプロレス団体関係者はこう話す。
「米国では世界一の団体・WWEが、ショーであることを認めたうえで、肉体を鍛え上げたレスラーたちのドラマを見せることで世界中のファンを魅了し、莫大な収益を挙げている。現地メディアの取材だっただけに、AJにとっても仕組みうんぬんなど、当たり前のことで、隠し立てする話でもなかったのでしょう。実は新日本自体も、今、目指しているビジネスモデルはWWEだといいますからね」
リングの上の闘いを見せれば四の五の言わせない自信があるからこそ、その舞台裏までサービスで公言できるのだろう。