庵野秀明総監督がこだわった徹底的なリアルさで、これまでのゴジラファンのみならず幅広い層に絶賛され大ヒット上映中の映画「シン・ゴジラ」。公開20日間の累計興収は38億円を超え、「50億超えは確実。60億も視野に入ってきた」と関係者の鼻息も荒い。
その「シン・ゴジラ」のモーションキャプチャーを野村萬斎が演じたことは公開初日に発表されているが、それもまた庵野総監督のこだわりから生まれたものだった。
「着ぐるみアクターだと、今までのゴジラと変わらない」
全然違う新たなゴジラの動きを模索し、苦悩し続けた庵野総監督や樋口真嗣監督は「もう古典芸能に頼るしかない」という結論に至ったという。
映画「のぼうの城」(12年公開)で野村萬斎と親交のある樋口監督が即座に彼に連絡し、快諾を得た。初回の打ち合わせで、野村は「どのくらいの着ぐるみですか?」と質問。「しっぽがあるから背中は重い」と言われると、その場にあった座布団を頭に1枚、背中に2枚乗せ、重心を下げ、すり足で進む“運び”という所作をやってみせた。
「その瞬間、庵野総監督も樋口監督も『ゴジラだ!』と感動したそうです。野村さんがいなければ『シン・ゴジラ』は今と違うものになっていたでしょう。座布団3枚と狂言の“人ならぬもの”によって実現した奇跡と言えるでしょう」(映画ライター)
ネットでは「余貴美子演じる防衛大臣が小池百合子にしか見えない」「消防や警察関係者が本気でゴジラ対策を考えている」などと騒がれ、石破茂元防衛相までがブログで言及するなど、何かと事象的な話題に事欠かない「シン・ゴジラ」だが、その根底には日本の古典芸能の幽玄世界があることも忘れてはいけないだろう。