「進撃の巨人」がこっぴどく酷評された昨年とは一変、この夏は邦画が興行でも評判でも大盛況だ。ハリウッドやディズニーの大作を蹴散らすように、東宝が社運をかけて放った「シン・ゴジラ」が一部の心配をよそに大ヒットしていることはご存じだろう。
「政治家にも『もしゴジラが東京に現れたら?』と大マジメに質問が飛ぶほどの社会現象になってますね。リピーターも多く口コミも相まって、ゴジラとは無縁と思われた女性客も取り込み、公開1カ月で興行収入53億円(8月28日現在)。まだ勢いが落ちてないことから、今年の邦画1位『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』(64億円)を抜いて70億円に到達するのではと言われています。第一作公開から62年、ついにゴジラが邦画界の頂点に立つとファンは沸き立っていました」(映画誌ライター)
ところが、だ。ここにきて「シン・ゴジラ」の快進撃を脅かすとんでもない特大ヒット作が現れた。
「新海誠監督のアニメ『君の名は。』のヒットぶりが凄まじい。8月26日に公開されるや、宮崎駿監督のジブリ作品なみのロケットスタート。最初の週末3日間で興収12億円、その後の平日でも客足はまったく衰えず、『映画の日』とはいえ2学期も始まった9月1日の平日も全国で完売御礼状態です。早くもゴジラの70億円どころか80億円、90億円レベルの国民的興行になるのではと噂されていますね。そして、映画ファンの間では復権したゴジラが今度も“因縁の作品”に負けるのかという驚きの声が出ています」(前出・映画誌ライター)
国内で900万人以上が観たとされる「ゴジラ」第1作が公開されたのは1954年(昭和29年)だが、この年、映画配給成績(当時は興行収入ではなく配給額が指標)で1位に君臨したのは「ゴジラ」(1.6億円)ではなく、女性ファンを中心に国民的人気シリーズとなっていた「君の名は」の最終第三部(3.3億円)だったのだ。もちろん、新海監督の「君の名は。」はリメイクではなくオリジナル作品だが、くしくも62年越しに「ゴジラ」と「君の名は」の同名タイトルが邦画界でトップ争いを繰り広げることにロマンを感じている映画マニアも多いという。
「夏休みも終わり、『君の名は。』がどこまでヒットを続けられるかは未知数。しかし作品の評判と地方や平日の興行状況から『シン・ゴジラ』を最終的に抜く可能性はかなり高い。これが平成29年だったらさらに面白かったと話す映画ファンも多いようですね」(前出・映画誌ライター)
昭和29年は松竹と東宝の争いだったが、平成28年はどちらも東宝の配給作品。まさに関係者は「してやったり」だろう。
(藤田まさし)