幹部じきじきに指名された精鋭を集め作られる「24時間テレビ」こそ、日テレの強さの秘密だ。しかし、王者になる前の同局にとって、眼前の敵こそ「フジテレビ」。朝においては高島彩・加藤綾子率いる「めざまし」、昼はタモリの「いいとも!」──両番組打倒のために行われた秘策が、当事者によって明かされた!
前回は、日本テレビの好調を支える日曜日の夕方から夜の時間帯の番組について書いた。今回は、まず平日朝の番組から始めたい。
現在、日テレでは、5時50分から8時まで放送している情報番組「ZIP!」が好調だ。10月3日には、今年4~9月の平均視聴率が9.0%となったことが明らかになっている。「めざましテレビ」(フジテレビ系)を世帯視聴率で逆転して、放送開始以来、初めて同時間帯の民放でトップに立ったのである。
日テレでは、1979年3月5日から2001年9月28日まで放送された「ズームイン!!朝!」が、長らく最強の朝番組だった。真っ向から挑んできたのが、他ならぬ「めざまし」。94年4月1日の開始当初は苦戦したものの徐々にパワーアップしてきた「めざまし」を前に、「ズームイン」はタイトルを「ズームインSUPER」に替えてバージョンアップを図る。しかし、若い女性視聴者は「めざまし」に流れ続けていった。
そこで11年に、装いも新たにスタートさせたのが「ZIP!」だ。開始にあたっては、ライバルの「めざまし」を徹底的に研究して、同様の路線で真っ向から挑んだが、開始当初は苦労の連続であった。
その原因は「ズームイン」に長らくなじんだ高齢者層を中心に、視聴者が離れてしまったことである。そこで、視聴者の土台作りからやり直していかなければならない事態となった。
もともと「ZIP!」はTOKIOの山口達也(44)やEXILEのMAKIDAI(40)らを曜日MCに据えて、豪華なイメージが当初からあった。14年にはメインMCを関根麻里(32)から北乃きい(25)に引き継ぐのだが、その頃から出演者とスタッフに「こなれ感」が出てきたのである。相乗効果として、年少の「きいちゃん」を出演者みんなで見守るという、アットホームな雰囲気も感じられるようになった。
この「アットホーム感」が出ると番組は強くなる。もともと有名芸能人をそろえているだけに、画面から“オーラ”が伝わってくるのだ。現実的な「数字」となって表れるまでに5年かかったのだが、その間ブレずにじっくり攻め続けた点が、視聴者からの信頼感へとつながっているのだろう。
この秋にはメインMCが、北乃きいから川島海荷(うみか)(22)に代わったが、アットホーム感は変わらず安定感を見せている。「めざまし」は、この春からジャニーズの「HEY!SAY!JUMP」伊野尾慧(26)を起用しているが、番組進行は基本的にアナウンサーのみ。そうした「めざまし」に対して、「ZIP!」がアドバンテージを得ているのは間違いないだろう。
村上和彦:(株)プラチナクリエイツ代表。65年生まれ、神奈川県小田原市出身。元日本テレビ放送網制作局専門部長兼演出家・テレビプロデューサー。「ヒルナンデス!」を立ち上げ、「『笑っていいとも!』を終了させた男」として知られる。「スッキリ!!」の視聴率アップや、「24時間テレビ」ほかを総合演出。14年に日本テレビを退職し、フリーランスに転向。現在もテレビ東京「モーニングチャージ」監修ほか番組制作を行っている。